空き家の遠隔査定の注意点

みなさんは「空き家の遠隔査定」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「遠隔査定」とは、空き家の動画や、写真を業者に送るだけで査定をしてもらえる方法のことをいいます。近年、距離の壁を越え、物件の価値を評価できるメリットから、空き家問題解決の糸口として注目されています。
しかし、その手軽さの裏には、専門知識や情報の限界といった見過ごされがちな課題も潜んでいます。今回は、遠隔査定の現状と課題、そして「空き家活用」を行うためにはどんなアプローチが大切なのかについてお伝えしていきます。
遠隔査定の限界と専門家の視点
近年、オンライン内見や動画での物件紹介など、IT技術を活用した不動産取引が広がりを見せています。それは空き家においても同様で、「遠隔査定」が注目されています。確かに空き家であっても遠隔査定ができれば、所有者は手軽に物件の価値を知ることができ、流通のきっかけにもなるでしょう。しかし、実際に遠隔査定を行う上では、いくつかの注意点があります。
まず、所有者が「スマートフォンやテレビ電話などのITツールを使いこなせるか」といったデジタルリテラシーの問題が挙げられます。テレビ電話でのリアルタイム内見は理想的ですが、実際には、所有者がスマートフォンなどで物件の写真や動画を送付しなければなりません。つまり、送付する写真の枚数や、質が査定の精度を大きく左右するのです。
専門家が求めるレベルの情報を得るには、一部屋につき四方向から、天井も含む写真を撮るなど、かなりの枚数と詳細な撮影が必要です。さらに、水回りの設備などは、品番が分かるように撮影することが求められます。しかし、素人が物件の「見どころ」や「問題点」を判断して撮影するには限界があり、結果として情報不足になりがちなのです。
ちなみに、当社は遠隔査定を実施しておりません。その大きな理由は、やはり現地でしか把握できない情報が多すぎるからです。例えば、天井の雨染み一つ取っても、それがどこから漏れているのかを特定するには、屋根の上を確認するなど、専門家による「目」と「予測」と必要です。空き家を本当に活用していくためには、このような細部まで徹底的に確認しておくことが欠かせないのです。
空き家流通の先にあるべきものとは?真の活用と持続可能性
近年、空き家を扱う不動産業者が多く現れるようになりました。しかし、こうした空き家を扱う業者の目的の大半は「空き家を流通させる」という点にあります。つまり「空き家を再び住める状態にして、別の所有者に住んでもらう」のではないのです。
もちろん、これまで流通してこなかった空き家を流通ルートに乗せるのには一定の意味はあるでしょう。しかし、そのビジネスモデルは本質的な問題解決につながっているとは言えない部分があります。なぜなら、空き家を購入した投資家や所有者などが、実際にその空き家を活用できなかった場合、結局は再び空き家に戻ってしまうからです。
空き家が流通していく間にも空き家は傷んでいきます。傷みがひどくなればなるほど、住むためには当然リフォームなどの費用がかかることになります。しかし、多額の費用をかけてまでリフォームするのはためらわれるため、結局のところ活用されないまま放置されるという負のサイクルに陥ってしまうのです。
実際、空き家の現場ではそのような物件もたくさん目にする機会があります。このような状況を避けるためには、やはり「空き家を活用してこそ再生だ」と捉える視点が不可欠なのです。
その点当社は、「新しい方に空き家に住んでもらうこと」を目標にしています。そのためには、売買の時点で、その空き家が本当に活用できる物件なのかどうかを手放す時点でしっかりと精査しなくてはなりません。そのためにも現地確認は必要不可欠なのです。
理想論かもしれませんが、空き家は人々に使われることで初めてその価値が生まれるもの。当社は、その理想を追い求め、空き家問題の本質的な解決を目指しています。
まとめ
お伝えしてきたように、遠隔査定は空き家流通の新たな可能性を示す一方で、情報が思うように取れない「限界」も存在します。単なる流通ではなく、物件の真の価値を見出し、持続可能な活用へとつなげるためには、情報の可視化に加え、個々の物件の持つ背景や課題に真摯に向き合う姿勢が欠かせません。だからこそ物件確認には、専門家の知見と現地に出向くことが非常に重要なのです。
当社では、長崎市内の空き家を専門的に取り扱い、そこから全国の空き家を減らしていく活動をしており、空き家に関するノウハウがたくさんあります。空き家対策について、ご相談やご質問などございましたら、お気軽にご連絡をいただけたらと思います。
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