全国の空き家問題の解決方法を考える

普段、私は長崎県の空き家について情報発信していますが、空き家は長崎だけの問題ではありません。総務省の「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」によれば、2023年10月現在の国内の総住宅数は6,502戸で過去最多となっているにも関わらず、空き家数も900戸と過去最多の数を記録しているのです。
この背景には、少子高齢化などの社会的問題やニーズの変化、不動産業界のビジネスモデルなど、さまざまなことが要因として存在しています。そして特に、長崎をはじめとした地方においては人口の減少が著しく、首都圏よりもさらに空き家問題が深刻化している現状もあります。
全国で起こっている空き家問題にはどのような解決方法があるのか。私はその一つが「戸建ての空き家再生」だと考えています。その理由について、私の経験も踏まえながら解説していきたいと思います。
社会のさまざまなニーズに「戸建ての空き家」がマッチする可能性
2024年に国内で生まれた子どもは72万988人と過去最低でした。晩婚化や未婚化も加速する中で、出生率の低下や人口の減少はますます進んでいくことが見込まれています。また、物価上昇やそれに伴う実質賃金の減少により、家計の苦しさを感じている人も少なくありません。さらに住宅の価格そのものも上昇しており、新築物件の価格は今や都市部以外でも4,000万円以上のものも多く高額化しています。このような状況で、「家を買いたい」と思うでしょうか? 少なくとも「新築物件を買おう」とは思わないはずです。
しかしながら、「一軒家に住みたい」という人は数多くいます。例えば、「アパートやマンションだと騒音が気になるので、一軒家で音を気にせず暮らしたい」という子育て世帯。あるいは、「生活空間とは別に仕事用の部屋をもう1つ欲しい」というコロナ禍を機に浸透したリモートワークで働く人たち。「趣味のために、作業できたり仲間で集まったりできるスペースを自宅に作りたい」という単身世帯などが挙げられます。
このような人たちは、マイホームを購入したいけれど予算が足りないため、仕方なくマンションやアパート、賃貸物件に住まざるを得ないというケースも多いと思います。特に、シングルマザー、シングルファザーの世帯、若年夫婦の世帯などは、住みたくても経済的に難しい場合もあるでしょう。
その点、戸建ての空き家物件は一般的な戸建て住宅の相場価格よりも安価であるため、まさにこうしたさまざまなニーズに応えることができるのです。
とりわけ空き家の増加が深刻な地方の場合、都市部の空き家よりもさらに物件価格は下がります。長崎を例にしても、数百万円台から購入できますし、中には無償の空き家もあります。
とはいえ、「自分の知らない土地に移住する」というのは、少しハードルが高いかもしれません。しかしながら最近は、都市部に持ち家がありながら自然豊かな地方にも生活拠点を持つという、2拠点生活(デュアルライフ)も注目されつつあります。そうしたライフスタイルの人には、地方の空き家物件がマッチするのではないでしょうか。
戸建ての空き家を、暮らしやすい作りにリノベーションして賃貸する。買主が自由にDIYできるよう、生活に必要な設備を修繕して販売する。こうした方法で戸建ての空き家を再生して提供することで、空き家問題の解決に貢献できるだけでなく、さまざまな人の住宅ニーズにも応えることができ、暮らし方の新たな選択肢も増えていくと私は考えています。
変わらぬ不動産業界のビジネスモデルにも一石を投じる
歴史的に見て、日本の住宅事情は人口増加に対応する形で変化してきました。かつては長屋や平屋が主流でしたが、都市部の人口増加に伴い、土地の有効活用のために狭い場所にマンションやアパートが次々と建設されてきたのです。
それにより、デベロッパーなどは多くの利益を得てきました。人口が減少傾向になった今でもそうした開発が続いているのは、不動産業界のビジネスモデルが昔と変わっていないためでしょう。利益の計上、事業継続を重視した開発は、「人の住む場所」を作る開発でありながら、一方でマンションなどに移り住む人を増やし、戸建ての空き家の増加を助長しているとも感じてしまいます。
またマンションやアパートといった共同住宅は、住民同士のつながりが希薄になりがちで、「隣に誰が住んでいるのかわからない」といった状況が多く見られます。もちろん適切な距離感は必要ですが、せめて隣人の顔がわかる状態は防犯上、防災上も大切なことだと思います。そのような問題に対しても、戸建ての空き家再生は有効なはずです。日本が失いつつある人と人のつながりを深め、より豊かで持続可能な住宅環境を実現できると考えています。
まとめ
戸建ての空き家再生は、深刻化する空き家問題の解決に寄与するだけでなく、現代の日本におけるさまざまな住宅ニーズを叶え、多くの人の暮らしを豊かにできる可能性があります。しかし、「空き家を再生して住む」という選択肢はまだまだ認知が浸透していない状況です。私たちは、長崎市から空き家再生の活動を広げつつ、将来的に全国の空き家減少につなげていけたらと考えています。空き家対策について、ご相談やご質問などございましたら、お気軽にご連絡をいただけたらと思います。
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