空き家

長崎の空き家処分に困ったら? 実家の処分を円滑に進めるポイント

日々、さまざまな空き家に関するご相談をお受けする弊社ですが、最近は「実家の処分をお願いしたい」というご依頼も多くいただきます。

長崎県のような地方都市の場合、子どもは成長とともに故郷を出て、実家の親御さんと離れて暮らしているというケースも少なくありません。すると親御さんが年齢を重ねて、お亡くなりになったり、一人暮らしになったりと変化が起こったとき、「実家の建物をどうしよう」という問題に直面するのです。

実家の処分方法としては売却もしくは解体、あるいは現状に合わせてリフォームや修繕をして住み続ける、賃貸物件として貸すといった選択肢があります。ですが、さまざまなことが障壁となって「では、この方法にしましょう」とスムーズに話が進まないことが多いのも現状です。いったいなぜなのでしょうか。

今回は、その要因と空き家になってしまう実家の処分を円滑に進めるためのポイントを解説します。

 

空き家の処分に立ちはだかる障壁とは?

 

空き家の処分がスムーズに進行しない要因としてよくあるのは、次の2つです。

1.室内に家財が多い

2.ご家族内でコミュニケーションがうまく取れていない

どういうことなのか、一つずつ見ていきましょう。


1.家財が多い


物件の処分を承る際は、まずは建物の状態、修繕すべき箇所などを確認する必要があります。しかし長年住まわれていた場合、家中にたくさんの家財や荷物があふれかえっていることも多く、そのままでは調査ができないため話を進めることが難しくなるのです。

とはいえ、残地物の撤去にはまとまったお金がかかります。荷物の量にもよりますが、一般的な戸建て住宅であれば最低でも60万円ほどは必要となります。また解体する場合は、家の大きさなどにもよりますが、150~200万円の費用がかかることが一般的です。

親御さんがご存命の場合は「親と子でどちらが処分費用を負担するのか」といった問題が発生することもありますし、お亡くなりになった場合も「これは本当に処分していいのだろうか」といったことでお子さんが悩まれるケースもあります。

このような場合、私たちとしても処分や解体に関する費用や業者のご提案などはできても、家財や荷物が撤去されないと、次の段階に行くことができません。まずはご家族間で問題をクリアにしていただく必要があります。



2. ご家族内でコミュニケーションがうまく取れていない


お子さんからは「実家を処分したい」とご相談を受けたものの、親御さんに話を聞いてみると「私は子どもの家に移住するつもりはない」「ずっとここに住み続けたい」などご家族の中で意見が相違しているケースもよくあります。

この問題もご家族で解決していただかなくてはなりませんし、その結果によってはさらに考えるべきことが発生します。
たとえば親御さんが実家にそのまま住み続けるという結論に至った場合、余計なコストがかからず住み慣れた環境で安心して暮らせるメリットがある反面、老朽化していく家や設備のメンテナンスをどうするかといった問題が生まれます。

特に、一人暮らしになってから4LDKや5LDKといった広い家を管理して行くのは体力的にも金銭的にも大変です。また高齢者の方の中には「子どもが独立してから主に1階で生活していて、2階にはほとんど行かないんです」といった方も多いですが、長期間使わない部屋があると、防犯上のリスクが高まるため対策が必要です。

また、使わない部屋があるせいで、シロアリの発生や雨漏りに気づけないという場合もあります。「住む」というのはその部屋を「使う」ということ。使っていなければ、その部分は空き家と同じ状態になってしまうということも、家族で共有しておきたい意識です。

いずれにしても、いざ処分したいというときに親御さんの希望とお子さんの希望にズレがあると、なかなか先に進めないのです。

空き家の処分を円滑に進めるためのポイント

 

では、空き家になってしまう実家の処分をスムーズに行うためには、どんなことに気をつければよいのでしょうか。私は、もし可能であれば以下の2つを押さえておけるとよいと考えています。


1.早い段階から将来について家族間で話をしておく

 

どんなご家庭でも、時の経過とともに家族構成やライフスタイルは変わっていくものです。変化があったときに、家をどうするのか。親御さんは将来どのような暮らしを望んでいるのか。そうしたことを、ざっくりでもいいので子どもが独立する前の早い段階から盆暮正月などでご家族が集まった時などに話しておくと、いざというときに考えのズレが生じにくくなるでしょう。

「お母さんとお父さんが亡くなったら、この家は処分して大丈夫?」
「どちらかが一人になったら、きょうだいの誰かと同居するか、小さい家に住み替えよう」
「家の処分には結構お金がかかるみたいだから、今から少しずつ備えておこうね」

こうした話を少ししておくだけでも、ご家族それぞれが心の準備ができます。

また話し合いをすることで、

「一人になっても、暮らし慣れたこの場所で住み続けたいのよね」
「老後は、海が見える場所に移住したいよ」

など、今まで知らなかった親御さんの本心がわかることもあります。希望を前もって聞いていれば、子どもとしても「高齢になっても住みやすい平屋にリフォームはできるのかな?」「近くに病院などがあって、安心して住めるエリアはどこだろう?」などと早めに動き始めることができるでしょう。

ちなみに、高齢の方の住まいの相談でよくあるのが、「平屋の家を探しています」というもの。階段の昇り降りの負担がなく、ご夫婦二人、もしくは一人でも管理しやすいというのが理由です。最近は平屋の家をあまり見なくなりましたが、例えば「今の家に住み続けたい」という場合、費用はかかりますが今お住まいの物件を平屋にリフォームするといった選択肢もあります。


2.家財や荷物は増やしすぎない



空き家を処分するにせよ、住み続けるにせよ、家財をあまり増やしすぎないに越したことはありません。とはいえ、長く住んでいるとどうしても荷物は増えてしまうもの。それに家族の思い出が詰まったものたちを一気に処分するのは、心理的に簡単にはできない側面もあります。

そのため、普段から「使わなくなったもの、不要なものを年に1回見直して処分する」「新しいものを購入したら、何か古いものを手放す」といったことを意識するが大切です。

ミニマリストまではいかなくとも、常に家財をその家に住んでいる人数に合ったボリュームにしておくことで、家を処分するタイミングが来た際も、余分なコストをかけずに身軽に動くことができるでしょう。

 

みんなが幸せになれる決断をするために

 

昔は「子どもが親の建てた実家を引き継いで住む」ケースも多く見られましたが、近年は「自分の家は自分で建てる(購入する)」という人がほとんどだと思います。だからこそ、地方都市に限らず、実家(空き家)の処分は多くの人がいつかは向き合うことになる課題なのです。

ご家族の歴史が刻まれた大切な家。その処分にあたって家族でトラブルになったり、悩みの種になったりしてしまうのは辛いものです。最後までご家族みなさんが笑顔でいられて、それぞれの希望も叶えられる。そんなベストな選択をするためにも、今回紹介したポイントをぜひ心に留め置いていただければと思います。