「10年放置した長崎の空き家は再生できる?」

当社には、普段多くの相談が寄せられるのですが、
「10年も放置してしまった空き家は再生できないですよね?」という相談が寄せられることがあります。相続がなかなか決まらない、解体費用がかかるので何もしないまま……さまざまな理由から長い期間放置されてしまう空き家は全国に数多くあるのです。では10年以上放置されてしまった空き家は、どのような状態になるのでしょうか。実際に当社が手がけた長崎県の空き家事例を見ながら紹介していきます。
当社が1棟目に着手した空き家
私が長崎県に来て「ここで空き家再生事業をしよう」と決めた日に、地元の不動産会社さんから紹介を受けた空き家歴20年超えの物件がありました。1棟目に手がけた物件でしたので、私にとっても思い入れが深い事例となります。

<草木に覆われた外観>
空き家になって長期間経過すると、建物はもちろん建物や敷地周辺の状況も大きく変わります。この物件は裏手にある崖が森になっていたこともあり、物件の敷地内まで草木が生い茂り外観が見えないほどの状態でした。窓枠の下半分は草木で外が見えない状態でした。敷地の入り口にある階段は、そこが階段であることもわからないくらい草に覆われています。
この草木は窓のサッシなどから、家の中にも侵食していました。枝が入り込むことで窓が開いて隙間ができます。そこから雨水が浸透することで、水が伝った壁には大量のカビが発生していました。

<枝が入り込んだ様子>
この物件のように草木によって空き家の劣化が進行する事例は、数多くあります。例えば、よく見受けられるのは、長い年月をかけてお椀状になっている雨どいに段々と土がたまり、そこに植物が根を張って屋根瓦の方へ伸びていくケースです。そのような場合、ただ伐採するだけでは2、3カ月もするとまた草木が伸びて元通りになってしまいます。日光を遮る防草シートや除草剤をしっかり使わないと、防ぐことができません。頑丈な家ですら草木に乗っ取られてしまうのですから、自然の植物の生命力には本当に驚かされます。

<草木を除去した後の外観>
草木を撤去すると、建物の外観自体は意外と綺麗だと感じました。しかし、室内に入ると前述のように植物が入り込んでいたことに加え、地盤沈下も見られました。
家を支える床材の木が抜け落ちてしまっていた上、物件裏手の崖から流れてきた水が、基礎部分の土を徐々に掘り下げてしまっていたことが地盤沈下の原因でした。そのため、室内は慢性的に湿気が強い状態であったのではないかと思われます。水道を出してみると、土を含んだ白い水が確認できました。
最も大きな被害はシロアリ
最初に物件を見た時は、まだ家財が多く残されていたこともあり気が付かなかったのですが、それらを撤去してみると大量のシロアリ被害が明らかになりました。

<シロアリの食べかす>
土の山のように見えるのは、シロアリの食べかすです。どれだけ多くのシロアリが生息していたかわかると思います。シロアリは1年中活動する虫で、コロニーという集団を形成し、建物の土台、柱、床下、壁などの木材を食べ続けます。厄介なのは、木材の内部に入り込んで食べることです。つまり、表面上は何も異常がなくても、シロアリに食べられてスカスカになっている場合もあるということです。
シロアリは長く住み着いてしまうと、耐久性がどんどん低下し、地震などをきっかけに倒壊してしまう可能性もあります。
この物件も、一見、普通の問題がない家に見えますが、シロアリの被害によっていつ倒れてもおかしくない危険な状態だったのです。
困難を極めた再生
内部まで確認し、あまりにも状態が悪かったため、正直に言うと「この物件は再生が難しいのではないか」と思いました。しかし、空き家の増加が社会問題になっている今、全国に同じようなひどい状態の空き家が増えているのだとしたら、空き家再生を手がけるものとして乗り越えなければならない。そんな使命感から、再生に着手することにしたのです。さっそく草木を除去し、窓の建て付けや床の修繕など、最終的にフルリノベーションとはいえないまでも、全体的な修繕を施しました。

<修繕後>
さらに新たに住む方が暮らしやすいよう、大きなシューズボックスを増設するなどの工夫もしました。
結果として、再生には想像以上の手間とコストがかかりましたが、空き家の再生に必要なこと、課題点を知ることができた良い経験だったと思っています。あの時学んだことは、現在の事業にも多く活かされていると感じています。ちなみにこの物件は修繕後、無事に入居者の方が決まり、「快適で住みやすいです」というありがたい声をいただいています。
大切な家のためにも定期的な管理を
日本の家屋はいくら丈夫に作られていると言っても、10年以上放置された空き家を再生するのは厳しいと言わざるを得ません。もし再生できたとしても、多額の費用がかかる可能性があるでしょう。また、家は誰も住んでいないとどんどん老朽化が進みます。ご紹介したように、自然の草木の力、シロアリなどによる影響も懸念されます。とはいえ、空き家になったまま何もできない所有者の方の事情もよくわかります。
特にご実家の場合、親御さんがご存命の時は「親が高齢になって家の中が散乱しているけれど、まだ親が住んでいるし口出しができない」という方も多いでしょう。その後、親御さんが亡くなって「どうすればいいのかな」と悩んでいるうちに10年近く経ってしまったという声もよく聞きます。
大変なことは十分承知ですが、数カ月に1回、誰かが様子を見に行くだけでも、深刻な状態に陥ることはある程度防げると思います。
ご自身や親御さんがかつて住まわれていた大切な家を、できるだけ良い形で、できるだけ費用を抑えて再生するためにも、定期的な管理を心がけたいものです。
当社のホームページには、長崎県の空き家再生事例を多数掲載しています。ぜひご覧になってみてください。