長崎の空き家では擁壁に注意!リスクとチェックポイントを整理しよう!
長崎は坂の町。宅地造成等規制法に該当していない土地の方が少ないと感じるくらい、斜面地に建物が建っています。そのため、石積みの擁壁やこの擁壁大丈夫かな。といったものも多く見受けられます。基本的に切り土や盛り土などをおこなう際は、擁壁の耐力や様々なリスクがないかどうかのチェックをおこない、役所の許可をうけて、工事を進めることができるものです。擁壁が耐力が不十分、いわゆる不適合擁壁だった場合、どのようなリスクがあるのか。また、現状資料が何も残っていなくても確認できるところはあるため、そういったチェックポイントなどをご紹介していきます。
擁壁とは?
擁壁(ようへき)とは、崖地で建築する際に、土圧や水圧によって、地盤が崩壊して土砂災害などを引き起こしたり、家が倒壊しないようにするための構造物になります。水平方向に対して30度を超えている崖には、擁壁を設けることになっています。
擁壁の種類はおおまかに下記の通りです。
・鉄筋コンクリート造(RC造)
現代ではよく見る、水平方向に対して垂直に建っている壁の擁壁です。鉄筋とコンクリートを組み合わせている擁壁で、形では、L型や逆T型が一般に使われるかたちです。メリットは、擁壁の上の土地を最大限に有効活用できることです。デメリットとしては、鉄筋とコンクリートを使用し、強度も十分に保つため、他の擁壁と比較するとコストが高いということになります。また、現場でコンクリートを打つ「現場打ち擁壁」と工場で作って設置する、プレキャスト擁壁の2種類があります。運搬用に1mか2mごとの板として持っていきますので、見分け方としては、切れ目があるものがプレキャストと判断して差し支えないと思います。
・空石積擁壁
コンクリートを使わずに、自然石やブロックなどを積み上げて作る擁壁で、わかりやすいものですと、お城の石垣に使われているものです。現代では、この工法は「危険擁壁」に指定されているため、進めようとすると許可がおりないことの方が多いです。
・練石ブロック擁壁
こちらも現代ではよくみる、長方形や菱形ブロックなどを積み上げながら、目地をコンクリートで固定しながら設置していく擁壁があります。土地の水平方向に対して垂直ではなく、少し斜めに設置することで、ブロックとコンクリートの重みで土を支える構造になっています。別名「もたれ式擁壁」ともいうようです。メリットはコストが安いこと、狭い場所でも施工できることなどがありますが、デメリットは、RC造と比べると使える土地の面積が少なくなるため、建築する範囲に制限がでてしまうことです。
どのようなリスクがあるのか
空き家を購入する際に、擁壁が不適合擁壁だった場合、どのようなリスクがあるのか。建て替えする場合も含めて、みていきましょう。
1.土砂崩れ
大雨などで含水量が多くなり、土が重くなり、擁壁に対する負荷が大きくかかることがあります。その含水量を減らすために水抜き穴などの設置が義務付けられていますが、石垣の擁壁ですとそういった水抜き穴などがなかったりする場合があります。
2.解体後、許可がおりない
耐力を満たしていない空き家付の土地を購入して、再建築する場合、役所の許可がおりない可能性があります。許可を受けるためには、擁壁の再建築が必要となり、数百万から数千万円ほどかかってしまうことがあります。この費用は建物代に匹敵するものになりますので、大変な費用です。もし崖付の土地を購入して再建築を予定する場合は、こういったリスクを考慮して、事前に不動産会社に相談することをおすすめします。
3.不同沈下など沈む可能性がある
中古住宅を購入して、その土地の崖が不適合擁壁で建築されたものだった場合は、不同沈下が起きる可能性があります。不同沈下とは、建物が不揃いに沈下を起こしていくことで、室内に床が斜めになってしまうところができてしまうという可能性があります。長崎の斜面地の空き家では、不同沈下していない空き家の方が珍しいというくらい、沈下している物件は多く見受けられます。賃貸で、所有者に擁壁をなおしてほしいと伝えても費用が1軒家が建つくらいの費用がかかったりする場合があるため、対応を依頼するのは現実的ではありません。入居する前に気になるようであれば、気持ち的にも長続きしないため、そういった物件は住まないようにしましょう。
擁壁チェックポイント
検討している物件の擁壁が不適合擁壁かどうかは、なかなか確認することは難しいですが、揃っている情報の中で予測することはできます。今ある情報の中でどのような点に考慮してチェックをしていけばいいか、みていきましょう。
1.宅地造成等規制法の区域内か否か
宅地造成等規制法の区域にある物件で造成工事をおこなう場合は、役所の許可が必要です。逆に区域外であれば許可は不要となります。このチェックは、不動産会社に確認することができます。売買契約時の重要事項説明書にも記載義務がありますが、売買契約時に確認するのではなく、気になる場合はこの部分だけ先に確認するようにしましょう。
2.石垣(石積み)かそうでないか
耐力を満たしていない擁壁は石垣もしくは石積みであることが多いです。特に斜面地の空き家で、築40年から50年程度の空き家については、石垣が採用されていることが多いです。この段階で、まずは上に記載したリスクがあるということを意識するようにしましょう。
3.水抜き穴があるかどうか
擁壁に対する水抜き穴は、壁面3㎡以内ごとに、内径7.5cm以上の防水素材の水抜き穴が少なくとも1個は義務付けられています。この数がまず入っているかどうかを確認しましょう。また、その水抜き穴から流れる水が変色していたり、水抜き穴自体が、上から潰されるように破損していたりすると注意が必要です。また、水抜き穴の口径が小さかったり、泥や雑草、コケなどが生えていたりすると、適切に水が流れないことになりますので、こちらも注意すべきポイントです。
4.擁壁が膨張している
これはかなりの危険信号ではありますが、擁壁を横からみて、膨らんでいたりすると、中の土圧に耐えられなくなっている可能性があります。こういう物件を見た場合は緊急性が高くなっている可能性がありますので、購入検討をやめて、所有者に連絡をして、擁壁の再建築を促すようにしてください。RC造では、コンクリートの中に鉄筋が入っていたりして強度も高いので膨張していたとしても原因を調べて対策をとることは可能かと思いますが、膨らんでいるのが石積みの擁壁だった場合は、かなり危険信号と推察されるものです。注意していきましょう。
まとめ
擁壁のリスクやチェックポイントについてご紹介していきました。空き家や中古住宅を検討している方は、本記事をみながら注意をしていただければと思います。あ長崎の空き家は斜面地に多くあるため、ほとんどの空き家が崖に面しています。隣地の崖については、隣地に対応してもらうとしても自ら所有している土地については、擁壁の危険性を再認識して、強度を高めるなど補強をおこなうことも検討する必要があると思います。しかし、なかなか擁壁を再建築する費用など払えるものではありません。崖付の空き家所有者の方は、擁壁の状態を役所に相談して、ご自身でも調べていただき擁壁に関する情報だけでも事前に揃えておくと、次の所有者も対策がうちやすいものになります。今の現状を把握する。是非心がけて実行してみてください。
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