長崎の空き家で、空き家再生に失敗した事例
長崎の空き家を引き取り再生する活動をしていますが、取り組み始めた初期の頃に失敗した過去の事例をご紹介していきます。振り返るとどういった判断が失敗につながったのか、どうして失敗してしまったのかということを、空き家の引き受けの経緯から、失敗から学んだことまで書いていこうと思いますので、同じく空き家再生投資や空き家再生をご検討されている方は、参考にしてみてください。
物件を引き取ることになった経緯
物件の場所は西北町。長崎市内では北部のエリアとなり、電停では始発終点の「赤迫」駅が最も近い駅になります。さらに北にいくと滑石や時津方面につながっていくということもあり、比較的ファミリーが多く住んでいるエリアです。
その西北町に、軽自動車3台分の駐車場付の空き家がでたということで、不動産会社の方からご紹介いただきました。その連絡を受けた時、別件で神奈川にいて、なかなか見に行けないということもあり、電話のみでご紹介をうけました。金額は540万円。キッチンの水道管が詰まっていて、一部やり帰る必要があるとの情報をいただきつつ、空き家再生物件として購入している物件の中では比較的高額になっていたため、判断を迷いました。しかし、そういう情報を持ってきてくださること自体に感謝し、自己居住用としても販売できる想定でお引き受けすることになりました。
申込後にわかったこと
引き受けの意思表示をして、契約に進んでいく段階で、現地をみにいける日程を調整し、現地に向かいました。その際にその敷地内の駐車場に車を停めずに近くのゴミステーションの前に一時的に停めることになりました。どうしてかをご担当者の方に尋ねると、どうやら敷地内駐車場の間口が狭く2mジャストくらいのため、普通車は入れない可能性があるとのことでした。2mあるということは事前に電話で聞いていたため、それならば問題なく駐車できると思っておりましたが、そこは長崎の斜面地。斜面地に続くように敷地があり、斜めになっているため、車庫入れをするために高い運転技術が求められるような地形になっていました。
また、その駐車場は袋小路の奥が少し膨らんでいるような形状をしていました。奥の1台を出すために、手前の2台を出す必要があるような、縦列に近いものになっていたため、生活していく中で不便さを感じるだろうということも、引き受け決定後にわかりました。
室内の様子
車を停めて、建物に近づいていくと、玄関向かって左側は、庭だけで30坪ほどあり、草が生い茂っていました。そのため、庭については、周辺から確認する程度にとどめて室内に入ることににしました。玄関は昔ながらの引き戸タイプではなく、開戸タイプのため、現代的な仕様になっていました。扉を開けて、中に入ると、玄関は、一般的な空き家と比べると、綺麗な状態になっていて再生不要なくらいでした。玄関入って右側にキッチンがあり、そのキッチンスペースについては、全体的にやり直す必要があるくらいでした。一部床が抜ける可能性があるという注意書きが貼ってあるくらいでした。
1階は4部屋あり、2階は2部屋と部屋数も多く、空き家再生し甲斐があるような印象を受けました。土地が370㎡と広く、建物は90㎡前後の空き家。早速協力業者と打ち合わせを進めて、リフォームの見積を依頼しました。
庭の草刈りについては、作業するにあたって草がない方がいいため、先に進めていただくようお願いすることにしました。
見積金額の確認
協力会社からの物件の見積金額の提示がありました。その金額は税込300万円を超えていました。計算をすると、540万円の取得価格に対して、取得の際にかかる諸経費が50万円程度(仲介手数料、登記費用、不動産取得税を含めた総額)となり、そこにリフォーム費用300万円を合計すると、890万円ということになります。そして、この見積をした際にわかったことですが、屋根も劣化が進んでいて、本当は葺き替えをした方がいいのですが、今回はその見積が入っていないということでした。屋根を葺き替えるとなると、足場も考慮すると100万円以上はするだろうと予測をたてると、仕入価格で1,000万円を超えてしまうということがわかりました。
1,000万円を超えて、自己居住用として販売する場合は、駐車場の間口が問題になります。1,000万円を超える物件であれば、敷地内駐車場付きで、間口も広く車を停めやすいという条件の戸建が、近くの滑石などにもあったりします。そうすると西北の坂の上の方になるので、販売するのが非常に難航することが想定されました。また、賃貸用として入居募集をおこなうとしても1,000万円をかけた物件に対して、家賃6万円となると、投資物件としては利回りが低くて商品にするには難しいということになります。
これは、困った。販売するためには、ここからさらに費用をかける必要があることと、さらに、販売したとしてもその物件が売れるかどうかがわからない。という状況になったため、一度リフォームは見送ることになりました。
物件管理に切り替え
事業として成立しないと判断をしたため、費用を回収するため、再度そのまま売却に出すことになりました。空き家となっているため、その物件の管理は自社内でおこたらず進めながら、購入希望者を探すことになります。自己居住用としての販売になります。場合によっては、古家付の売地として、販売することもおこないます。
この判断をするということは、当社では再生できないという決断をしたということになります。大変悔しい思いをしましたが、そうせざるを得ませんでした。
売却完了
結局、引き受けした価格と同額の540万円で売却することになりました。売却するまで約2年弱、物件の管理に要した費用と、購入の際の諸経費などが損失となってしまいました。さらには、紹介してくださった不動産会社やリフォームの協力会社にもお時間をとらせてしまうことになりました。
会社としても、この経験を次に活かすために振り返りをしたのですが、理由は明白でした。
失敗をした要因
①現地を確認しないまま引き受けを決定したこと
不動産取引の場合、いい情報というのは時間との勝負です。1日経過するだけで、引き受けられるかどうかという瀬戸際にくることもあります。しかし、空き家再生をする際には、どんなにいい条件だったとしても、現地をみないで引き受けるということはしてはいけないということを学びました。この西北町の引き受けから、どんなにいい条件でお話をいただいても、必ず現地を確認するようにしています。
現地をみていれば、駐車場の間口が狭いということも理解できます。軽自動車が3台停められたとしても、奥の1台を出すために手前の2台を出さないといけないような、並列の駐車場ではないということを知っていたら、重要な判断材料として捉えていたと感じます。
また、リフォーム価格についてや、屋根の状態についてもそうです。現地をあらかじめみていたら、キッチンスペースの部屋の状態も確認できておりましたし、屋根の状態も確認することができました。全てはこの「現地をみなかった」ということが大きな要因となっています。
②空き家再生において引き受けする金額が大きすぎたこと
今では、空き家再生のために物件を引き受ける際、最終的な活用方法として、1,000万円以内の800万円前後の自己居住用として販売するか、賃貸用として入居募集をして、空き家再生投資の物件として販売する方法の2つを主力の活用方法としています。
もし、仮にこの物件が200万円前後で購入できていたとしたら、この2つの空き家活用方法で販売することができたということになります。リフォームが300万円だったとしても、諸経費も入れて、仕入総額550万円、800万円とはいわずもっと安くしても販売できる状態になっていたということになります。仮に、540万円で、リフォームを一切しなくていい物件だった場合も同様ですが、それでは当社の付加価値を提供しないまま転売ということになるため、当社が手掛けなくてもいい物件ということにもなります。
やはり空き家再生をするには、最初に購入した価格が高すぎたということになります。
この物件を引き受ける時に、再生する物件をたくさん仕入れたい状況だったという心理的な環境も影響しています。
まとめると、この空き家から下記のことを学びました。
・物件情報がきた時は、焦らず、現地に直接伺って、自分の目で必ず確認すること
・現地確認の際には、その物件にいくまでの道から、建物の内部外部の全ての状況を確認すること
・引き受け金額については、自分が仕上げたい価格から逆算して計算をしておくこと
会社の経験としても大切にして、次の空き家再生に活かしていきます。
まとめ
長崎の空き家再生において失敗して、結果空き家再生できなかった事例をご紹介いたしました。他にも失敗はたくさんありますが、その全てが会社の経験となっています。この失敗を、次回以降の空き家再生に活かせるようにしていきます。空き家再生を検討されている方や、空き家再生投資をされようとしている方にとってもご参考にしていただけたら幸いです。もしさらに深掘りをした詳しい話をされたいという方や、空き家再生投資に取り組みたいが失敗できないという悩みをお持ちの方など、いらっしゃいましたらぜひ下記よりお問い合わせいただけたら幸いです。悩みは自分だけで抱え込まないように、専門家に相談してみてください。
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