空き家

長崎空き家再生、所有者の思いをつなぐ

今回は、シリーズ第4弾、長崎空き家再生において、当社が大事にしていることをご紹介していきます。空き家再生に関わっている方々は色々な理念や方針のもとに活動されていると思いますが、「長崎」や「空き家」という言葉で活動していく上で、欠かせないものとなっています。

 

①どういう経緯で空き家になったのか

 

そもそも住宅の歴史に簡単に触れる必要があります。

戦後の1950年代、深刻な住宅不足の中、今現在も続いている「建築基準法」が制定されました。高度経済成長期の中、住宅不足解消に加えて、建設業だけでなくその他多くの業界が住宅建築に絡むため、経済波及効果が高いということも手伝って、国の経済政策の柱のひとつになるほどでした。ベビーブームや「農村から都市へ」の移住という時代背景や、当時「夢のマイホーム」とまで言われ、住宅を所有することはひとつのステータスとして根付いていきます。

現時点で当社が空き家再生を手がけている物件は、築年数40-50年のものが比較的多く、上記の時代背景で考えれば、戦後のベビーブームで生まれた方々が建てた家であることが想定できます。現所有者様のお父様お母様や、またそのような世代の方々が新築で建てたことになります。私たちは、相続が発生したあとの現所有者様と直接お話することが多いです。子供時代を過ごしたご実家に当たることが多く、お話を伺うと色々な思い出を語ってくださいます。

 

・小さい時に柱につけた身長をはかる傷などがまだ残っている。

・県外に住むようになってからはあまりこれていなくて、父が倒れて病院にいった日、そのままの状態になっている。

・家族でよく揃ってご飯を食べていたのはこの部屋で、父はよく新聞を読んでいた。その読み終わった新聞を本代わりによく読んだ。

・家の前は更地だが、このとなりの家の子とは毎日のように家の前で遊んでいた。

 家の中に遊びにいっても、親父さんが音楽の先生で色々と楽器を教えてもらった。

・昔は家の中で結婚式をあげたりした。人を呼ぶのが好きな父がそういう間取りにしていた。

・この海がみえる4畳半の書斎から、父が座りながら窓を眺めて、汽笛を聞いているのを襖のすきまからみていた。

・この家がどうなっていくのかを見届けないと親父に申し訳がたたない。

 

など、伺ってきたお話は本当にそれぞれの人生というか、千差万別で、同じものはひとつもありませんでした。

そういったお話を聞いた後に、空き家になった経緯を聞くと、

幼少期から様々な経験をした住宅を、売っていいものなのか、そのまま残しておきたい。という本音があるものの、

いつまでも残しておけない、近隣に迷惑がかかる。自分の子供達には同じ思いをさせたくないなど、様々な思いがおありでした。

解体費用や相続登記の義務化などお金や責任のためという以上に、感情の部分も手伝って、なかなか空き家を処分できずにいらっしゃるご様子でした。特に長崎の場合は、「再建築不可」の物件も数多くあり、その場合、現存の住宅を解体してしまったら、同じ場所に2度と建物を建てられないということになります。建物を残していけなければ、その時感じた景色や空気も残していけません。

 

②次世代に残したい

 

上記のような思い出がある中、できることなら次世代にのこしたい。どなたか活用できる方がいればその方にゆずりたいということをよく伝えてくださいます。しかし具体的にどう活用するのか、どうやって再生するのかというのはイメージするのは難しいです。そういった状況の中、空き家を残す方法がわからないまま、ただ、当時両親が一生懸命に働いて建ててくれた家をそんな安い金額で売りたくないため、思わず平地の戸建と同じような売却価格をイメージしてしまいます。お気持ちはよく分かります。現所有者様とは、誠心誠意向き合って、最初から期待させてしまうようなお話は避け、あくまで現実的なお話をお伝えいたします。みなさまお話をすると分かっていただけますが、納得できなくてもいいと思います。お気持ちの整理がつくまで、でも建物の状態がひどくなる前に、空き家再生するため向き合う必要があります。

 

③所有者の思いをつなぐ

 

中古住宅の販売の際には、よく聞かれるのが、「前はどんな方が住んでいたのですか」というご質問です。私も購入する場合は、気になりますし、今こちらをご覧いただいている方にも同様の興味が沸く方もいると思います。特に理由もない方もいらっしゃいますが、なんでしょう、気になるのだと思います。

そういった時に、前の所有者様がどういった生活をされていたのか、どういう思いで売却に出されているのか、すぐ答えられるように社内で情報共有をおこなっています。建物自体はリフォームである程度綺麗になりますが、そういったエピソードは色褪せることなくそのままお伝えすることができます。このような話は、空き家再生の売買のタイミングでしか、なかなかお話を伺えません。そのため、当社では空き家の情報を仕入れる際に、そのタイミングでしか聞けないこと聞き、次世代の方に伝える準備をしています。中には、聞きたくない方もいらっしゃるので、その場合は特にお話はしません。ご興味がおありの方には開示をしています。

 

まとめ

 

その住宅がなぜ空き家になってしまったのかというところから、当時のことを現所有者様にお話を伺うと本当に昨日のことのように色々とお話ししてくださいます。空き家再生することだけが本事業の意義ではなく、そういった思いも、次の世代につないでいける会社にしていきたいと思っています。