空き家

長崎で増える空き家を無償譲渡する方法とは?空き家バンクの活用と注意点

空き家の維持管理に負担を感じ、お困りの方は全国に数多くいらっしゃいます。
私たちが拠点とする長崎県も同様です。

地方都市のため、所有者が遠方に住んでいて対応できないまま放置されるケースも多く、草木が伸びたり建物が傷んだりしている物件は少なくありません。

 

そんな中で注目されているのが「無償譲渡」という方法です。

「空き家を売却したくても買い手がつかない」「解体に高額な費用がかかる」。
こうした悩みを抱える所有者にとって、無償譲渡は有効な選択肢の一つです。

 

この記事では、無償譲渡の仕組みやメリット・デメリットについて、長崎県での事例や注意点も含めて解説します。

 

 無償譲渡とは?通常の売買との違い

 通常の不動産売買では、土地や建物の価値に応じた価格が設定され、買主が代金を支払い、売主は所有権を移転します。

 

一方、無償譲渡はその名のとおり売買代金を「0円」とする取引です。

無償譲渡でも所有権移転登記は必須で、登録免許税や司法書士報酬などの費用が発生します。

 

代金の有無にかかわらず、いずれも譲渡契約であることに変わりはなく、譲渡人と譲受人にはそれぞれ義務や責任が生じます。

 

そのため「タダだから」と安易に口約束だけで取引を済ませるのは危険です。トラブルを防ぐためには、費用負担や契約内容、責任の範囲を書面にまとめ、双方が合意することが重要です。

 

 無償譲渡の相手を探すには?空き家バンクの活用

 無償譲渡は代金が発生しないため、不動産会社が仲介を行うケースはほとんどありません。

 

では、取引相手を探すにはどうしたらよいかというと、空き家情報を専門に扱うウェブサイトや各自治体が運営する「空き家バンク」が主に利用されています。



空き家バンクは、空き家を売りたい、あるいは賃貸したい人と、利用したい人をマッチングするものです。登録物件には、無償や格安のものも含まれています。
長崎県内でも、移住支援や定住促進の取り組みの一環として、多くの自治体が設置しており、リフォーム補助金や支援制度などの情報も発信しています。

 

特に長崎市では、斜面地に空き家が集中しており、買い手がつきにくい物件が空き家バンクを通じて無償で移住希望者に引き渡された事例もあります。

 

とはいえ、空き家バンクは手続きのサポートや仲介をしてくれるわけではありません。そのため、情報を登録するだけでは、なかなか取引に至らないのが実態です。

 

空き家専門以外のフリマサイト、SNSなどでも「家差し上げます」といった情報を見かけることもあります。しかし、物件情報や個人情報の取り扱いの明確な規約やガイドラインのない情報には注意してください。

 

 無償譲渡のメリッ

 譲渡人(所有者)にとって、無償譲渡には以下のようなメリットがあります。

 

維持管理や税金から解放される

草刈りや修繕などの管理負担、そして毎年発生する固定資産税の支払いが不要となります。

 

解体や修繕費用なしで手放せる可能性がある

再活用を前提に引き受ける相手が見つかれば、所有者が解体やリフォーム費を出さずに済むこともあります。

 

 譲受人にとってのメリットも見てみましょう。

 

低資金で住まいや拠点を確保できる

購入費用が不要なため、若い世代や移住希望者にとって大きな魅力です。

 

リフォームや改装に予算を回せる

建物購入費を抑えられる分、設備や内装を整える費用に充てられます。

 

 無償譲渡のデメリットと注意点

 一方で、以下のことには注意が必要です。

 

仲介者不在で手続きが煩雑になりやすい

代金が発生しないため、不動産会社が関与しないケースが多く、取引の相手探しや、登記や契約の段取りを全て当事者自身が行わなければなりません。時間や労力がかかるうえ、不動産取引の知識がないと合意事項の漏れや契約書の不備が起こりやすくなります。

 

契約不適合責任のリスク

柱のシロアリ被害や屋根裏の腐食など、重大な欠陥があった場合には「契約不適合責任」を問われる可能性があります。免責条項を契約書に盛り込むケースもありますが、合意形成が難しいこともあります。

 

契約後に重大な問題が発覚する場合がある

見えない部分の修繕に想定外の費用がかかる、相続登記が未了で所有権移転ができない、境界や近隣関係に問題があるなど。事前の調査や告知を怠ると、譲受人が契約の目的を果たせなくなってしまいます。

 

 無償譲渡の流れ

 
空き家を無償譲渡するプロセスを、譲渡人側と譲受人側の目線でそれぞれ見ていきましょう。

 

<譲渡人(空き家の所有者)>

1.登記簿謄本や固定資産税を確認し、権利関係を整理する

2.空き家バンクなどに登録し、譲渡先を探す
3.譲受希望者からの問い合わせ、内覧に対応する

4.解体や修繕、残置物処分などの費用の負担を協議する

5.条件をすり合わせて譲渡契約書を作成・署名押印を行う

6.法務局で所有権移転登記を行う

 

<譲受人(新しい所有者)>

1.空き家バンクなどで物件を探す

2.現地で建物・土地の状況を確認する(雨漏り・境界など)

3.固定資産税や修繕にかかる費用の負担を把握する

4.契約内容を確認し、書面で合意する

5.所有権移転登記を申請する

6.入居準備を行う(リフォーム・補助金制度の活用の検討)

 

 無償譲渡の際に、起きやすいトラブルとしては以下が挙げられます。

・情報不足や口約束による認識の不一致

・費用負担が不明確さ(固定資産税・解体費・残置物処分など)

・相続登記未了による所有権移転の停滞

・近隣住民、地域コミュニティとの摩擦(地域のルール、用途変更や民泊活用など)


トラブルを避けるためには、事前の調査や契約内容の明確化が重要です。
合意事項は必ず契約書にまとめ、写真や記録も保管しておきましょう。


契約の不備を防ぐためには、費用はかかりますが、専門家への依頼を検討するのも一案です。

 

・司法書士:相続登記・所有権移転などの手続きを確実に行なってくれます。
・行政書士:法的に有効な契約書面の作成を行なってくれます。

 

「手間をかけたくない」「個人間でのやり取りに不安がある」という場合、空き家再生を専門とする不動産会社に譲渡する方法もあります。


業者相手であれば、契約不適合責任を問われる心配がありません。再生後の用途も明確なので、スムーズな取引が期待できます。物件情報や登記事項に不明な点があっても、不動産会社が調査や手続きのサポートをしてくれて、契約書の作成や段取りなども任せることができるので安心です。

まとめ

空き家を無償譲渡することで、所有者は管理や税金の負担から解放され、移住希望者は低資金で住まいを得ることができます。 

ただし「0円だから簡単」とは限りません。契約内容を明確にし、登記の確実な実行、専門家への相談を通じて、双方が安心できる取引を行うことが大切です。


空き家が若い世代や移住者に引き継がれることで、高齢化や過疎化が深刻な地域に活気が生まれます。無償譲渡は「空き家の負担」を「地域の資源」へと変える有効な方法とも言えるでしょう。

この記事を読んで、空き家の活用法として無償譲渡に関心を持っていただけたら幸いです。当社は、長崎市を拠点に、お引き受けした空き家を住宅として再生しています。空き家を手放したい方、移住先の住まいとして空き家をお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。