【長崎は空き家率全国上位】移住希望者・投資家にとってのチャンスとは?

長崎は全国でも空き家率が高い地域として知られています。一見するとマイナス要因に思えますが、実は不動産投資家や地方移住希望者にとっては大きなチャンスでもあるのです。
そこで本記事では、長崎の空き家率の実態や投資・移住での活用可能性について、長崎市で空き家再生事業を営む立場から詳しく解説します。
長崎の空き家率の現状
はじめに、総務省が5年ごとに実施している「住宅・土地統計調査」(2023年調査)をもとに、長崎の空き家率の現状をお伝えしましょう。
この調査では、「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家率」が発表されています。
「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」とは、空き家の中でも、賃貸・売却用や二次的空き家(別荘など)で一時的に人が利用していない空き家を除いたものです。つまり、空き家問題の対象となっている空き家といえます。
調査によると、長崎県の「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家率」は9.9%でした。全国平均は5.9%のため、長崎県は空き家率が高いことがわかります。全都道府県の中では9番目、九州8県の中では鹿児島県の13.6%に次いで2番目の高さです。
特に顕著なのが、県庁所在地である長崎市、県北部の中核都市である佐世保市、そして五島列島や壱岐・対馬などの島しょ部です。
長崎は、都市部・地方部ともに空き家問題を抱える全国有数の「空き家県」といえます。ただしこれは、裏を返せば「全国的に見ても安価に住宅を取得できるチャンスが多い地域」と捉えられるのです。
参考:総務省「令和5年住宅・土地統計調査住宅数概数集計(速報集計)結果」
なぜ長崎は空き家率が高いのか?
長崎の空き家率が全国的に突出している背景には、いくつかの地域特有の要因があります。
まず、人口減少と高齢化です。「長崎県年齢別推計人口調査結果(令和5年10月1日現在) 」によると、長崎県における65歳以上の老年人口の割合は34.4%です。
なかでも島しょ部において、高齢化率が深刻化しています。高齢化率トップ5は、小値賀町52.6%、新上五島町45.7%、平戸市43.1%、南島原市42.9%、五島市42.6%で、ほとんどが島しょ部です。
長崎では、若者が大学進学や就職を機に、福岡県や首都圏に流出しています。その結果、親世代が住んでいた家が相続されても、子どもたちは既に県外で生活基盤を築いているため、実家に戻ることなく空き家となるケースが増えているのです。
次の要因は、坂道や狭小地といった地形的な制約です。長崎市は「坂の街」として知られるように、市街地の多くが斜面地に形成されているのが特徴です。
斜面地に建つ住宅は、道路が狭く資材搬入や工事車両のアクセスに制約があるため、建て替えや解体の工事費用が割高になります。経済的負担が大きいため、結果的に放置される空き家が増えていると考えられます。
さらに、先ほど触れたように若者が県外へ流出していることもあり、親から住宅を相続したものの「遠方に住んでいて使い道がない」「処分コストが高い」といった理由で、そのまま放置されるケースもあるでしょう。
もうひとつの要因は、エリアの二極化です。市街地に近いエリアや利便性の高いエリアでは、一定の賃貸需要や購入需要があります。一方で、中心部から離れた郊外の住宅地や斜面地の高台にある住宅地では、需要が低迷しているのです。
この二極化が進むほど、需要の低いエリアでは空き家が増加し、地域全体の魅力が低下するという悪循環に陥ってしまいます。
参考:長崎県県民生活環境部統計課「長崎県年齢別推計人口調査結果(令和5年10月1日現在) 」
投資家にとってのチャンス
ここまでお伝えしたように、長崎は複数の要因により空き家率が高くなっていますが、不動産投資家にとっては魅力的な投資対象となり得ます。
<物件を安価に仕入可能>
長崎には、500万円以下で購入できる戸建が数多く流通しています。この初期投資の低さは、不動産投資の入口を大きく広げます。まとまった資金がなくても、また初めての不動産投資でリスクを抑えたいという方でも、チャレンジしやすい価格帯です。
<高い利回り>
安価に仕入れた物件をリフォームして賃貸に出すことで、高い利回りが期待できます。
たとえば、300万円で購入した戸建住宅を200万円でリフォームし、月額家賃6万円で賃貸したケースを考えてみましょう。総投資額は500万円、年間家賃収入は72万円となり、表面利回りは14.4%になります。
学生、単身者、高齢者、ファミリーの賃貸需要があるため、立地を選べば空室リスクを抑えながら高利回り経営が可能です。
<出口戦略の多様化>
長崎の空き家投資の魅力は、さまざまな出口戦略を描ける点にあります。
まずは賃貸経営です。賃貸経営では、安定した収益を得られます。
売却も選択肢のひとつです。空き家を適切にリノベーションして付加価値を高めれば、移住希望者や若い夫婦、自分でリフォームする手間を省きたい購入者からの需要が見込めます。
民泊運営も有力な選択肢です。長崎は異国情緒あふれる観光都市として、国内外から多くの観光客が訪れます。コロナ禍後の観光需要回復に伴い、宿泊施設の需要も高まっています。歴史的な街並みに近いエリアや、港が見えるロケーションの物件であれば、民泊として高い収益を上げることも可能です。
単一の収益モデルに依存せず、市場環境や自身の状況に応じて柔軟に戦略を選べるのが、長崎の空き家投資の強みです。
<融資の追い風>
空き家問題が社会課題として認識されるようになり、金融機関の融資姿勢に変化が見られることも、投資家にとって追い風です。
長崎の地方銀行や信用金庫では、空き家再生や地域活性化に貢献する不動産投資に対して前向きで、空き家対策関連の融資制度が整備されつつあります。このような制度を活用すれば、自己資金が限られている場合でも、投資を始めることが可能です。
併せて、国や県の補助金制度を利用できれば、初期投資をさらに抑えられます。
移住希望者にとってのチャンス
長崎の空き家は、投資家だけでなく、地方移住を考えている方にとっても大きなチャンスです。
<リーズナブルに「持ち家」が実現>
都市部では、マイホームを持つには大きな経済的負担が伴います。戸建住宅を購入するには、数千万円から億単位の資金が必要です。
しかし、長崎には500万円以下で購入できる空き家は数多くあり、リフォーム費用を含めても1000万円以内で「持ち家」を叶えることも可能です。
住居費を大幅に削減できれば、その分を趣味や教育費、貯蓄に回すことができ、生活の質を高められます。テレワーク移住や二拠点生活を考えている方にとって、長崎への移住は非常に魅力的な選択肢です。
<長崎らしい歴史ある街並みに住める魅力>
長崎には、他の都市にはない独特の魅力があります。江戸時代の唯一の開港地として、オランダや中国との交易で栄えた歴史があり、その面影を残す街並みが今も残っています。
京町や三原など、長崎らしい歴史のある街で暮らすことが可能です。毎日が観光地に暮らすような感覚で、歴史や文化を身近に感じながら生活できるのは、長崎ならではの魅力です。
<リノベーションによる理想の住まいの実現>
空き家を購入する大きなメリットは、自分好みにリノベーションできることです。
たとえば、京町家風リノベーションを施せば、伝統的な日本建築の良さを残しながら、現代の生活に合った設備や動線を取り入れられます。高い天井や太い梁などを活かしつつ、キッチンやバスルームは最新設備にするといった和モダン住宅の実現も可能です。
<自然と都市機能の両立>
長崎は人口40万人弱の地方中核都市でありながら、豊かな自然に囲まれています。市街地から車で30分も走れば、美しい海岸線や山間部が広がり、アウトドアアクティビティを手軽に楽しめるのが魅力です。一方で、市内には生活に必要なインフラが十分に整っています。
長崎への移住は「田舎暮らし」と「都市生活」の良いところを併せ持っています。平日は便利な都市機能を享受し、休日は自然の中でリフレッシュする、そんなライフスタイルがきっと実現できるはずです。
空き家活用の具体的な事例
ここでは、実際に長崎の空き家がどのように活用されているか、具体的な事例のイメージを紹介します。
<事例1:築古戸建の賃貸経営で高利回りを実現>
Aさんは築古戸建住宅を、350万円で購入しました。200万円をかけて、リフォームを実施。内装や水回りを新しくし、外壁を塗り直しました。近隣の賃料相場を参考に月額6万円で募集したところ、すぐに入居者が決まりました。
総投資額550万円に対し、年間家賃収入は72万円、表面利回りは約13%です。
<事例2:民泊運営でインバウンド需要を取り込む>
長崎市の中心市街地に近い住宅地にある空き家を、Bさんが購入し、民泊施設として再生しました。
長崎は世界遺産の軍艦島やグラバー園をはじめ、観光資源が豊富です。インバウンドの需要も高まっています。民泊を1泊2万円前後で運営し、稼働率60%を維持できれば、年間約400万円の収入を得られます。
<事例3:移住者が自宅兼カフェで地域交流の拠点に>
長崎に移住したCさんは、空き家を購入し、1階をカフェスペース、2階を自宅として改装しました。カフェには地域住民や観光客が訪れるようになり、地域交流の拠点として機能しています。
空き家は単なる住む場所や収益物件だけでなく、地域貢献としても活用できるのです。
行政の支援や補助制度の活用
空き家に投資したり移住したりする際に、活用したいのが行政の支援や補助制度です。
<長崎市・住宅リフォーム支援補助金>
長崎市の住宅リフォーム支援補助金は、住宅の省エネ化、バリアフリー化、居住性向上、住宅リフォーム工事に要する費用の一部が助成される制度です。
<長崎市・移住支援空き家リフォーム補助金制度>
長崎市の移住支援空き家リフォーム補助金制度は、長崎市にある一戸建て空き家住宅の改修工事などを行う場合に補助金がもらえる制度です。空き家を有効活用して、移住や地域コミュニティを促進することが目的とされています。
申請者、対象となる空き家、対象となる工事にそれぞれ細かい条件が決まっていますが、空き家改修にかかる工事費用の50%(上限50万円)が支給されます。
<長崎県移住支援金>
長崎県移住支援金は、東京圏から長崎県に移住した人に支給される補助金です。
就職などに関する要件を満たすと、2人以上の世帯には100万円が支給され、さらに18歳未満の世帯員と一緒に移住する場合は最大100万円が加算されます。(市町によっては30万円)単身者の場合、支給額は60万円です。
<長崎市・木造戸建住宅の耐震改修の助成制度>
長崎市の木造戸建住宅の耐震改修の助成制度には、大きく2つあります。
ひとつは、「耐震診断支援事業」です。耐震診断費136,000円のうち、113,000円が助成され、自己負担額が23,000円で済みます。
もうひとつは、「耐震化総合支援事業(改修工事・現地建替)」です。工事費の80%が助成され、上限は100万円です。
これらの補助制度はいずれも細かい要件が定められていますが、活用できれば自己負担を抑えられます。気になる方は、長崎市のホームページを確認してみてください。
また、地方自治体が運営する空き家バンクでは、売却または賃貸を希望する空き家の情報が提供されています。物件の写真や間取り、価格などの情報がウェブサイトで公開されており、誰でも閲覧可能です。
移住を検討している方や投資物件を探している方は、まず空き家バンクをチェックしてみるのがおすすめです。
参考:長崎市「令和7年度 住宅リフォーム支援補助金」
参考:長崎市「令和7年度 移住支援空き家リフォーム補助金(定住促進空き家活用補助金)」
参照:長崎県移住支援公式HP ながさき移住ナビ「【東京圏から移住をお考えの皆様へ】長崎県が実施する移住支援金・補助金のご案内」
参照:長崎市「耐震改修の助成制度(木造戸建住宅)」
まとめ
長崎は全国的に見ても空き家率が高く、一見すると深刻な課題を抱える地域といえます。しかし視点を変えると、不動産投資家や地方移住希望者にとって大きなチャンスでもあるのです。
成功のポイントは、需要のあるエリア選定とリノベーションの工夫です。どんなに安く購入できても、需要がなければ投資は成功しません。
長崎の空き家は、地域課題の解決と自己実現を同時に実現する可能性を秘めています。不動産投資や地方移住を検討している方は、ぜひ長崎の空き家活用を選択肢として考えてみてください。