空き家

長崎の空き家を再生する上で重要な「合計特殊出生率」とは?

長崎県の空き家再生を考える上で重要な指標のひとつに、人口に関する数値である「合計特殊出生率」があります。

人口が減ると住む人も減り、空き家が増えます。そのため「将来の人口がどうなるか」という視点が、空き家問題を考えるときに欠かせない要素です。

本記事では、合計特殊出生率とはどのような指標なのか、長崎県はどのような状況なのかをお伝えします。

合計特殊出生率とは?

合計特殊出生率とは、15~49歳までの女性が生涯に産む子どもの平均数を示す指標です。地域の将来人口を予測する上で重要なデータといえます。

2024年の日本全体の合計特殊出生率は1.15で、前年の1.20を下回り過去最低となりました。出生数も過去最低の68万6,061人。初めて70万人を割りました。

長崎県においても合計特殊出生率は8年連続で減少しており、2024年は1.39で、前年の1.49を下回っています。

しかし他の都道府県と比較すると、長崎県の合計特殊出生率は2024年が8位、2023年が2位と高いことがわかります。つまり、長崎県は全国的に見て産まれる子どもが多いというポテンシャルを秘めているのです。

これは、県として産業振興や移住・定住対策に取り組んだ結果と見られています。

一方で長崎県においても、過去と比較すると減少し続けているのも事実です。子どもが産まれなくなり人口が減ると、空き家が増加したり地域コミュニティの維持が困難になったりと、長崎県の将来に大きな影響を及ぼします。

大学までは長崎県、就職は県外へ。

合計特殊出生率は全国的に見て高い長崎県ですが、若者の県外流出が深刻な問題となっています。

2024年のデータによると、県外へ転出した人と転入した人の差である転出超過数は4,997人でした。そのうち20歳〜24歳が2,148人と、約43%を占めています。

長崎県の大学を卒業した学生のうち、県内出身者の約3割、県外出身者の約9割が県外へ転出しているデータもあります。大学までは長崎県にいても、卒業後に県外へ流出してしまっているのです。

この背景には、県内に若者が働きたいと思うような企業が少ないことが考えられます。会社の口コミを閲覧できる「openwork」の長崎県の総合評価ランキングを見ると、1位は株式会社ジャパネットたかた、2位は株式会社ジャパネットホールディングスと全国的に名の知れた企業です。

しかし、3位以降は株式会社長崎銀行、長崎大学病院、十八親和銀行など、ローカルな企業が続きます。その他、半導体工場などへ進む人も多いかもしれません。

長崎県には、IT企業やスタートアップ、グローバル企業など、首都圏で人気の高い分野の会社が少ないのが現状です。県内には魅力的な就職先が限られていると感じる若者が多いかもしれません。

せっかく長崎県で多くの子どもが産まれても、大学卒業後に県内で働かずに流出してしまえば、長崎県の人口減少に拍車がかかります。実家を相続して住み続ける人も減り、空き家が増加する要因となります。

まとめ

長崎県の空き家再生において、合計特殊出生率や若者の県外流出は密接に関わっています。

合計特殊出生率の高さは、長崎県のポテンシャルを示す好材料です。それを将来の人口維持や空き家対策に活かすには、若者が長崎に残りたくなる、あるいは戻ってきたくなる仕組みが必要です。

空き家再生は、ただの建物修繕ではありません。暮らす人がいて、次の世代へとつながる循環をつくってこそ本当の再生といえます。若者が定住したいと思えるような街づくりが、長崎の空き家問題を解決する鍵となるでしょう。