空き家の引き取り手順とは?

「空き家を手放したいけれど、どうすればいい? どんな手順で行うの?」
少子高齢化や人口減少などによって全国で空き家が急増する中、そんな悩みを抱えている人が増えています。空き家は引き継いだ人が住むことができればベストですが、すでに持ち家があったり遠方に住んでいたりする場合、そうもいきません。
かといって「空き家のまま持っておきたくもない……」という葛藤もあるでしょう。
しかも家1軒を手放すとなると、フリマアプリで不用品を売るように簡単には行かず、手続きが面倒な印象もあると思います。
しかし実際は、事前に流れを理解し準備をしておけば、スムーズに空き家の引き取りを業者に依頼することが可能です。
本記事では、手放したい空き家を業者に引き取ってもらうための手順や注意点を、わかりやすく解説します。
査定は不要!? 空き家引き取りの基本的な流れ
空き家を手放す場合、一般的には以下のような流れとなります。
1.不動産業者などに相談(電話・メールなど)
2.業者による現地確認
3.条件や価格の決定(必要に応じて)
4.契約、引き取り
ここでポイントとなるのは、「どんな業者に依頼するか?」です。
業者の中には、直接空き家を買い取るところもあれば、査定をした上で一般市場に売り出すための仲介をするところもあります。
「手間なくすぐに引き取ってもらいたい」
「買取り価格はあまり気にしていない」という場合、前者がおすすめです。現地を確認し大きな問題がなければ、比較的すぐに引き取ってくれるでしょう。大体2週間ほどあれば完了すると思います。
「えっ? 査定に出さなくていいの?」と思うかもしれませんが、一般的に空き家の多くは非常に安価で取引され、無償同然の価格がつく場合もあります。加えて日々経年劣化が進むため、手放す時が遅くなればなるほど、さらに価値は下がっていくのです。すると最悪の場合「無償なのに引き取り手がいない」といったケースすらあり得ます。
しかしながら、査定を行う仲介業者は高値で売れた方が仲介料が増えることもあり、「もしかしたら高い金額で売れるかもしれませんよ。市場に出してみましょう」などと期待を持たせるものです。当然、所有者も期待が高まります。
しかし、現実は「高値がつかない」ことがほとんどです。結果として空き家期間が長くなってもっと価値が下がってしまう、そんなこともよくあるのです。
「空き家をすぐに手放したい」という本来の目的を叶えるのであれば、そもそも査定はせず、直接買取りの依頼をすることを検討してみてください。
また業者選びの際に避けたいのは「2.業者による現地確認」をしない業者です。断定はできませんが、現地を見ない業者の多くは転売目的です。空き家には劣化や破損などさまざまなリスクがあるにも関わらず、現地を見ず買い取れるのは、「空き家を新たな住居あるいは別の用途に活用しよう」という想定がないからこそなのです。
もちろん「それでも引き取ってもらえるならいい」という考えなら良いかもしれません。ですが、こうした業者に引き渡すと、最終的に投資家などに割高で転売されたり、割高にしたために購入者が見つかりづらくなったりと、本質的な活用につながらない可能性があります。
空き家とはいえ、もともとは家族が住んでいた思い入れのある家だと思います。「手放したいけれど、誰かに押し付けてその先は知らない……」そんな手放し方は不本意でない方も多いはず。その家を再び蘇らせて活用する意思が本当にある業者かどうか。それを見極めることも、引き取り先の業者を選ぶ上での重要なポイントです。
空き家引き取りに備え、「相続登記」と「残置物整理」は忘れずに
スムーズな空き家の引き取りには、所有者側の事前準備も必要で、大きく分けて2つが挙げられます。
その1つが、相続登記です。空き家の中には、亡くなった親名義のまま放置されているケースも少なくありません。ですが、相続登記を行い所有者が確定していないと、業者は引き取ることができないのです。
相続登記の手続きには2~3週間ほどかかります。またご家族でなかなか集まれない、揉めているなどの事情で、相続人決定まで時間がかかることもあります。手放したいと思ったらすぐに取り掛かった方がよいでしょう。2024年4月から相続登記の義務化も始まっており、後回しにするとリスクとなります。
もう1つの重要な準備が、家具や生活用品といった残置物の整理です。
業者によっては残置物まで引き取ってくれるケースもありますが、前提として「どれを捨ててよいか」「これは残したい」の判断は所有者がしなければなりません。
以前、亡くなったお母様の空き家を相続され、引き取りを急いでいたお客様がいらっしゃいました。家を拝見すると、生前お母様がコレクションした着物が大量に残されていたのです。中には高価なものもあり処分に悩んでしまい、最終的に撤去完了まで2~3ヶ月かかってしまいました。このようなケースは決して珍しくはありません。
「全部処分してよい」と明確に決まっていれば引き取りはスピーディーに進みますが、そうでなければそこで流れはストップします。早く空き家を手放したいのであれば、あらかじめ残置物の選別をしておくことをおすすめします。
まとめ
手放したい空き家の、引き取り手順や注意点について解説しました。
スムーズに手続きを進めるポイントは次の通りです。
・早く手放したいなら査定に頼らず、直接引き取ってくれる業者へ相談する
・空き家を再び活用する意思を持った、信頼できる業者を見極める
・相続登記を済ませ、所有者を明確にしておく
・残置物を事前に整理し、処分の可否を判断しておく
重要な鍵は業者選びと事前準備です。
大切な家を、誰も使えない空き家のままにするのではなく、再び誰かの役に立つ住まいや資産とするために、今回ご紹介したことを知識として持っておいていただき、行動に移していただければ幸いです。