相続した空き家を売却したら税金が高い?損をしないために知っておきたい特例制度

不動産を売却すると、「譲渡所得税」という税金がかかる場合があります。
実際、空き家の売却をご相談いただく中でも、「売りたいけど、税金のことが心配」「売ったら損してしまうのでは…?」と不安を抱えている方も多くいらっしゃいます。
譲渡所得税の税率は、所有期間が5年を超える不動産(長期譲渡)で約20%、5年以下の場合(短期譲渡)では最大約40%もの税率になります。これは決して軽い負担ではありません。
せっかく売却して利益が出ても、これだけ高い税金がかかるとなると売却をためらう方が多いのも当然です。
しかし、相続した空き家の売却に限っては、特別な優遇措置が用意されていることをご存知でしょうか?
「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」を活用すれば、税負担を大きく減らすことが可能です。
今回は相続した空き家の売却で損をしないために、ぜひ知っていただきた特例制度についてご紹介します。
相続した空き家の売却で「3,000万円特別控除」が使える
相続した空き家の売却で使える特例制度の正式名称は「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」というものです。
国税庁HP:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
この特例のポイントは、相続した家を令和9年12月31日までの間に売却した際、譲渡益の最大3,000万円まで非課税になるというものです。この制度を活用すれば、譲渡所得税を大きく軽減できます。
つまり、売却によって得た利益が3,000万円以内であれば、譲渡所得税がゼロになる可能性があるのです。
譲渡益の計算方法は売却価格から取得費と譲渡にかかった費用が差し引かれた額となります。
譲渡益=売却価格―(取得費+諸経費)
しかし、相続した空き家の場合、購入した時の売買契約書などが手元にないことがよくあります。取得にかかった費用を証明できる書類がない場合、取得費は売却価格の5%として計算されることになります。これは実際の取得費よりもかなり低くなるケースがほとんどです。
たとえば、次のようなケースでは、譲渡所得税にかなり大きな差が出ます。
【取得費が不明な一戸建てを相続し、2年後に2,000万円で売却したケース】
売却価格:2,000万円
取得費用:100万円(2,000万円×5%)
諸経費:100万円(仲介手数料、印紙代などの諸経費)
譲渡益:1,800万円
所有期間:5年未満(短期譲渡)
通常であれば、この譲渡益1,800万円に約40%の税率(短期譲渡)をかけた、約720万円の譲渡所得税が発生します。
しかし、この特例が適用された場合、譲渡益は3,000万円以下なので全額非課税となり、この約720万円の譲渡所得税がゼロになります。
この特例制度を活用して空き家を売った場合、かかる税金にはこんなにも大きな差が出るのです。
なぜこんな特例制度があるのか?
この特例制度が設けられた背景には、空き家の増加が深刻な社会問題となっていることが挙げられます。
空き家の発生は、所有者の高齢化や相続がきっかけになることがほとんどです。しかし、譲渡所得税の税率が高いことから、引き継いだ人が売却をためらい放置してしまうケースが後を絶ちません。
「税金がかかるから売りたくない」と、相続した空き家を放置する人が増えると、防災や景観、防犯の面でも地域の住環境に悪影響を及ぼします。
そのため、税金の負担を軽減することで国が売却を後押し、空き家の流通を促進しようというのがこの制度の狙いです。
この特例を受けるための条件とは?
「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」制度を利用するには、いくつかの条件を満たす必要があります。マンションなどの集合住宅はこの特例の対象とはならず、相続人の数が3人以上である場合は2,000万円までとなります。
主な条件は以下のとおりです。
・被相続人(親など)が一人で住んでいた戸建て住宅であること
・相続後にその家に誰も住んでいないこと
・昭和56年5月31日以前に建てられた旧耐震基準の家屋であること
(※ただし一定の耐震基準を満たすもの)
・売却価格が1億円以下であること
・相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却すること
この他にも、建物や敷地の面積や使用状態についての条件があります。
また、他の特例制度との併用についても注意が必要です。
特例を使うには確定申告が必要
この特例の適用を受けるためには、被相続人居住用家屋等確認書など複数の書類を添えて確定申告をする必要があります。
とはいえ、聞き慣れない専門用語に戸惑うことも多いかと思いますし、必要書類を揃えるなどの手続きは煩わしいものです。
また、この特例は、相続から売却までのスケジュールや、建物や土地の状態によって、適用のできるかどうかが変わってきます。
「申告の仕方がよくわからない」「特例が使えるかどうか、判断が難しい…」
そんな時は、なるべく早く専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
空き家の売却には税金の不安がつきものですが、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」を活用すれば、税負担を大きく減らすことが可能です。
しかし、特例の適用にはさまざまな適用条件や期間の制限がありますので、空き家の相続を受けたら早めに行動を起こすことが重要です。
空き家の状態や売却価格を早めに把握し、適用できる制度を理解しておくことで、将来の判断がスムーズになります。
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