空き家再生における契約不適合責任とは?
不動産取引において、契約不適合責任という責任が売主側に生じる可能性があります。これはどんなものなのか、また空き家再生における契約不適合責任とはどういった点に注意したらいいのかということをご紹介していきます。
・契約不適合責任とは?
・空き家取引における契約不適合責任の考え方
・まとめ
契約不適合責任とは?
契約不適合責任は、日本の民法において、売買契約などの取引において提供された物やサービスが契約の目的に適合しない場合に、売主が負う責任のことをいいます。2017年の民法改正により、それまでの「瑕疵担保責任」に代わり、2020年4月1日から適用されるようになりました。
契約不適合責任の要件
契約不適合責任が発生するためには、以下の要件が必要です。
1.契約の存在
売買契約や請負契約など、取引に関する契約が成立していること。
2.契約不適合
提供された物やサービスが契約の内容に適合していないこと。具体的には、品質、数量、性能、用途などが契約内容に反している場合です。
3.通知義務
買主や受領者が不適合を発見した場合、相当の期間内に売主や提供者に通知する必要があります。通知がない場合、買主はその不適合を理由に権利を行使することができなくなることがあります。
契約不適合責任の内容
契約不適合責任には以下の内容があります:
1.履行の追完請求
不適合があった場合、買主は売主に対して、その不適合を是正するよう請求することができます。具体的には、修理、交換、補充などが含まれます。
2.代金減額請求
履行の追完が不可能または著しく困難な場合、買主は代金の減額を請求することができます。
3.損害賠償請求
不適合により損害が発生した場合、その損害について賠償を請求することができます。ただし、売主が不適合について善意無過失である場合には、損害賠償請求は制限されることがあります。
4.催告解除
契約の目的が達成できないほど重大な不適合がある場合、買主は契約を解除することができます。解除する場合、売主にその旨を通知する必要があります。
5.無催告解除
重大な欠陥であり、それがために契約そのものの目的を達成できない場合に限られるのですが、相手方に通知することなく契約を解除することができます。
注意点
契約不適合責任を追及する際には、以下の点に注意が必要です。
通知期間
不適合を発見したら、できるだけ早く売主に通知することが重要です。遅延すると権利を失う可能性があります。
証拠の保存
不適合の証拠をしっかりと保存し、後で問題が生じた際に証拠として提出できるようにしておくことが重要です。
専門家への相談
契約不適合責任に関するトラブルが発生した場合、弁護士などの専門家に相談することが望ましいです。
空き家取引における契約不適合責任の考え方
契約不適合責任は、売主に不利で、買主は権利の幅が広がる考え方になります。空き家の取引の場合、売主がこの責任を意識し過ぎてしまい売り出しをすることを躊躇してしまう場合があります。そういったことがないよう、ここで整理しておきましょう。
1.売主は、契約不適合責任は免責にすることができる
売主が個人(宅建業者ではない)の場合は、契約書の特約のところで「契約不適合責任は免責とする」という文言をいれることで、売主買主双方合意の上で、免責とすることができます。
当社が関わる空き家取引の契約書には、ほとんどの場合、契約不適合免責の文言が入っております。
数年以上空き家の状態が続いた物件は、シロアリ被害や、雨漏りや建物の傾きなど、必ずといっていいほど何かが生じています。
その状況を正確に把握するために、不動産仲介会社が現地に入って調査することはほとんどありません。売主から情報を聞いて、それを買主に伝えることになります。そうした時に、売主がその空き家を取得した背景は、実際に住んでいた自宅ではなく、相続であることが多いため、売主としてもどういう状態になっているか、全て話を前所有者にヒアリングできているわけではないため、そこで躊躇してしまします。
あるのかないのかわからない契約不適合責任の該当事由があるとなれば、基本的に、契約不適合責任は免責で契約した方がよいでしょう。
2.宅建業者が買主の場合
宅建業者が買主の場合、売主が売却する時には契約不適合責任は免責になっていて、その宅建業者が販売する時に、契約不適合責任を免責にすることができない、ということが発生します。そのため、宅建業者が買取をする場合、中には売主の契約不適合責任を免責にしたがらない業者もいる、ということを覚えておいてください。ほとんどの業者は、契約不適合責任は免責に合意しますが、そのあたりは、注意が必要です。
3.双方合意していることが大切
空き家の取引をおこなう場合は、必ず現地を確認していただくことが必要です。契約不適合責任を免責にすることを、買主にしっかりと理解していただき、築年相当の劣化損耗があることを前提に本物件を買い受けることを認識してもらえれば、契約不適合責任が発生するようなことはないと考えられます。双方が納得できる情報を共有して、契約不適合責任を免責にすることで、空き家の売主にとって、次の世代に引き継ぎやすくなります。
まとめ
契約不適合責任の意味合いから、空き家取引における契約不適合責任の考え方をご紹介いたしました。
空き家所有者として、所有していることでどういったリスクが発生するのか、リスクを正確に理解したうえで、引き継ぐタイミングを見極め、適切な取引をおこなうことが大切です。業者に買取してもらうことは、契約不適合責任免責で取引をおこなえることが多く、安全ではありますが、買主が個人であっても、空き家取引に詳しい業者を仲介に入れた方が、より安全な取引ができると考えています。