空き家

10年住んだら家がもらえる!?長崎発の「贈与型賃貸住宅」とは?

みなさんは、「贈与型賃貸」という言葉をご存じでしょうか。贈与型賃貸とは、リノベーションした空き家を賃貸し10年間住んだ入居者が希望すれば、土地と建物を無償で譲り受けられるという形式を指し、長崎市にある明生興産という会社が発案した仕組みとされています。

「10年住んだら家がもらえる」というこれまでにない不動産の取引形態はそのインパクトから話題となり、地元新聞やテレビ番組でも取り上げられ、画期的な空き家再生の手法としても注目されています。本記事ではこの「贈与型賃貸」について詳しくお伝えしていきます。

 

長崎だからこそ生まれた贈与型賃貸住宅

 

贈与型賃貸住宅が生まれた背景には、長崎市特有の空き家事情があります。

手掛けられた建物は築50年を超えるものも多く、斜面地に位置しているため、一般的な中古住宅の市場では需要が高くありません。

しかし、明生興産はそういった不動産仲介の常識を覆し、空き家に新たな付加価値を加える

ことで、空き家再生に活路を見出しました。実際、贈与型賃貸住宅の写真を見ると、法人向け、外国人向けなど、幅広い需要に応える物件も企画されており、提供された4棟は早々に成約となっています。

贈与型賃貸住宅はまた、借り手側のメリットも生み出しました。
例えば経済事情などで融資が受けにくくマイホームを諦めていた方にとって、「10年住めば家をもらえる」というのは、支払った家賃が無駄にならないという点でも非常に魅力的です。

(なお、家をいただくかどうかも選択できるとのこと)

贈与の条件として設定されている10年という入居期間は、お子さんが生まれ高校、大学進学等で家計の負担が増える頃にちょうど家賃の支払いがなくなるという狙いもあるのだとか。空き家の増えた地域に若いファミリー世代を呼び込むことも期待されています。

長崎市にある斜面地の空き家は、道路事情が悪く売ることも貸すこともできず、依然として維持管理の負担に悩む方が大勢います。そういう意味で、「贈与型賃貸住宅」は、今後の長崎市の斜面地利用に大きなインパクトを残したと言っても良いのではないでしょうか。

 

投資としても優秀な贈与型賃貸住宅

 

この贈与型賃貸の仕組みは、一方で次のようなメリットも挙げられます。

・空室のリスクが低い

・家賃の支払い意欲が高く滞納のリスクが低い

・賃貸の需要の少ないエリアでも借り手が見つけやすい

・売却の相手方を探す手間がかからない

 

10年間の賃貸期間を設定することで、安定した運用が見込める上、譲渡することが前提となっているので出口戦略にも悩まされずに済みます。まさに贈与型賃貸の仕組みは空き家再生投資の手法としても優れていると言えるでしょう。

さらに取得やリフォームにかかる初期費用が抑えられれば、投資効率も非常によいものになります。

 

「じゃあ多くの不動産会社が贈与型賃貸のような形を導入すればよいのでは?」と思ってしまいますが、初期投資である「リフォーム代金」が一定程度かかること、またそれを10年かけて回収しなければならないことになります。つまり、贈与型賃貸住宅の運営には相応の資金と体力がないと難しいのです。そういう意味で、覚悟と決意を持ってこの取り組みをしているとも言えます。

とはいえ、一般の中古住宅市場では買い手、借り手が見つからない空き家であっても、特別な付加価値を生み出すことによって、住宅として再流通させた明生興産の事例は、今後の長崎の空き家の再生を促進させていく第1歩となるに違いありません。

  

まとめ

 

実は明生興産はそれ以前にも、「建築基準法の接道義務を満たしておらず売るのが難しく、周辺の道路が狭いため解体費用が高額になってしまう」という空き家の再生にも取り組んだ実績があります。それが、「寄付贈与型賃貸住宅」という形です。これは解体にかかると想定されていた費用の約半分を所有者に寄付という形で負担してもらい、リノベーションして贈与型賃貸住宅にする、というものです。まさにニーズと空き家活用を見事にマッチさせた取り組みと言えるでしょう。つまり、諸条件を上手く調整することができれば、空き家を贈与型賃貸住宅として活用できる可能性が示された、ということでもあります。

地域の活性化や社会に対する貢献度の高い事業としても注目されていますので、地方自治体や行政からの助成が拡充される可能性もあります。今後の動向にも注目していきたいと思います。

 

空き家は一軒ごとに状態が異なるため、最適な運用を決めるためには、様々な事情を読み解くことから始まります。

いち早く空き家に精通した専門家に相談することが、空き家の悩みを解決する近道です。

少しでも不安なことがあれば、一人で悩まずぜひ一度お声がけください。