空き家

【空き家 長崎】なぜ大手不動産会社が空き家再生のトップランカーでないのか?

当社は、空き家再生というものを発信していますが、大手企業はなかなか空き家再生というものに注力しているところをあまりみかけません。逆に規模が大きくない会社の方が空き家再生に着手しやすいのか。なぜ大手が空き家再生のトップランカーでないのか。やらない理由があるのではないか。不動産業界や不動産事業の仕組みをご紹介した上で、当社の見解や考察を書いていこうと思います。

 

【空き家長崎】大手不動産会社の収益構造(不動産仲介業)

 

長崎で大手不動産会社というと、皆さんがよくご存知の会社がいくつか頭に浮かぶと思います。そういった会社の代表的な事業は、不動産売買仲介業(以下、仲介業)です。こちらは、物件の売買において売主と買主の間をとりもって、仲介することで得られる仲介手数料を収益とする事業のことを指しています。この仲介業が、一般の方に認知されている、不動産屋さんの仕事だといっても過言ではありません。

その仲介業の収益モデルは、物件を売りたい方を売主、物件を購入したい人を買主として、その間に入ることで、売主と買主からそれぞれ仲介手数料をいただくというモデルです。この仲介業のモデルは、売主と買主それぞれから仲介手数料をいただけるパターン(両手仲介)と、売主からのみもらえる、買主からのみもらえるパターン(片手仲介)があり、収益があげやすいのは、売主買主それぞれから仲介手数料をいただくこと(両手になります。そのため、物件を売りたいとご相談していただけるようになることと、買いたいという方を募集すること、両方に力を使っていくことになります。ネット上で広告を出したり、チラシを配布したり、物件をポータルサイトに掲載したりと、色々な方法で集客をおこなっています。

また、仲介手数料の金額は、売買代金の3%+6万円+税となっています。当社の記事でもご紹介しましたが、低廉空き家等で800万円以下の物件については、仲介手数料は33万円(税込)ということになっています。

物件1件1件の人的コスト(役所調査や契約書作成、現地にいって写真を撮ったりなどの販売するためのコスト)や広告費用を考えると、できる限り売買代金の大きい金額を、両手仲介で取引することが、最も効率よくかつ収益があがることになります。

 

【空き家長崎】大手不動産開発事業の収益構造(不動産開発業)

 

不動産開発事業(以下、開発業)というのは、土地を仕入れて、その土地に建物を建てて販売する事業や、マンションを仕入れてリノベーションをして販売する事業など、仕入れてその不動産の付加価値をあげて販売するような事業のことを指します。土地を購入するのも、建物を建築するのも多くのコストがかかる上、販売できて会社に売買代金等が入金されるまでそのコストを回収することができません。開発資金を投じても従業員の給与などの支払いをまかなえるほどの資金体力が必要になる事業です。土地を仕入れて建物を建てて、販売が完了するまで、少なくとも6ヶ月前後はかかってきます。その間の人件費や事務所の家賃などの固定費を考えると、1棟販売するのにもそれなりの収益があがらないと事業を継続できません。

 

【空き家長崎】大手不動産会社が空き家再生のトップランカーでない理由を考察

 

①収益額が低い?

低廉な空き家の売買については、両手仲介で取引できたとしても、売主から33万円(税込)、買主から33万円(税込)で総額66万円(税込)の入金になり、収益としては60万円となります。先に述べた仲介業や開発業において、1取引あたり、60万円では事業を継続していくことが難しくなります。仲介業で3,000万円の物件を両手仲介で取引すれば、単純計算で、90万円+6万円 ×2(両手)となり、192万円となります。開発業に関しては、収益額に幅がありますが、当社が先述したような開発業をやるとした場合、少なくとも1棟あたり200万円は収益を出さないとこちらも継続することは難しいです。低廉な空き家の取引や、空き家再生については、やはり会社の規模に対して、1件あたりの収益額が低いことが1つ理由としてあげられるのではないかと思います。

②利害が一致していない?

仲介業であれば、その空き家の状況を買主に伝えなければいけませんが、細かいところまで、物件を調べ上げる対応ができる方があまり多くありません。仮に、空き家を売りたいという人が、もし無償でもいい、1円でもいいという売買になったとします。そうすると不動産会社としては、その空き家をそのご希望の金額で掲載することになりますが、そうすることで掲載した会社に対して、冷やかしを含めて、問い合わせが殺到します。会社の電話がずっと鳴っているという状況にもなりかねません。その全てに対応して、現地の案内もおこなって、買主をみつけるとなると、買主はみつかるとは思いますが、他の業務も圧迫され、本来3,000万円の両手仲介の取引を進めたくても、それができなくなってしまうこともあります。現場の営業担当者としても、空き家問題については解決していきたいと考えている方はいらっしゃいます。しかし、そういったことになってしまうと、会社の事業が継続できなくなることに加えて、担当者としての目標数字も達成できなくなってしまうのです。

開発業として空き家を取り扱う場合は、空き家をリノベーションして販売することになります。しかし、空き家がどういう状態になっているのかを把握するのに時間がかかります。床下や屋根裏、全ての状況を把握して、その上で工事内容を決定する。そのプロセスそのものに大変なコストがかかります。また、工事自体も1点ものになり、「全ての空き家を同じ仕様で工事する」というわけにはいかず、その物件ごとに仕様を考える必要があります。それだけのコストをかけても、収益をそれほどあげることができません。それであれば、平地に新築を建てたり、マンションをフルリノベーションしたり、マンションを建設した方が、工事内容も均一化できますし、品質も維持できるという発想につながってしまうと考えられます。

③空き家を専門で対応できる人がいない?

低廉な空き家については、専門の知識が必要です。大手不動産会社には、様々な人材がいます。人脈や人徳があり、仲介業だけで多くの売上をあげることができる人材や、素晴らしい立地の土地を比較的安く仕入れてこれる人材、というように、売ることや買うことに特化している人材などがいます。しかし、その中に、空き家の状態を正確に判断できる人材というのは、あまり多くありません。ましてや、そういった売ること買うことに特化した人材にはその分、会社として人件費もかけていくため、その人材を空き家の専門家に育成するにしても、育成し終えるまでの間、会社の収益は一時的にさがると考えられます。また、建物の専門家といえば、「建築士」が浮かびますが、社内に建築士がいる会社であれば対応できそうですが、それもまた、かける人件費に対して、おこなう業務のコストが合わなくなってきてしまうでしょう。決して対応できない人がいないわけではないと思いますが、経営の観点から考えるとなかなか空き家再生事業をおこなうとしてもハードルが高くなるといった事情があると考えられます。

 

【空き家長崎】小さな会社だからできること

 

当社は創業まもない会社で、人材も多くありません。しかし、大手企業にはないような、意思決定の早さ、固定費の少なさ、空き家再生に特化している専門性をもっております。さらに、会社としては、空き家再生に関わることしかおこなっていません。

そのため、引き受けの際に、売主様とはその場で直接話をして、その場で空き家の状況を確認させていただき、判断をして、引き受け金額を確定して提示することができます。先述している仲介手数料でも会社の固定費が少ない分、十分に事業を継続することができます。今、住んでいる家をどうしようか、親族に引き継いでもらうこともできない。斜面地にお住まいの方はものすごく悩んでおられます。小さな会社だからこそ、売主様が抱えている悩みや、社会課題に対して、フットワーク軽く、スピード感をもって対応していくべきと考えています。

 

まとめ

 

大手不動産が空き家再生のトップランカーでない理由を考察してまいりました。実際に色々な不動産会社の方に話を伺ったりすると、空き家再生をやりたいのだけど状況的にできない、対応に悩んでいる。というお声を伺うことがあります。私も同じ状況だったら、そうせざるを得ないと感じます。収益構造を考えると、空き家再生だけをおこなっていては、会社を継続することができない会社が多いと思います。売主買主、不動産会社の皆さんも、色々な事情を抱えています。この空き家再生事業は、関わる全ての人の悩みを解決できる可能性を秘めていると日々感じています。当社としては、今まで以上に専門性を高めて、再生棟数を増やして、空き家問題について認知が進むよう、変わらず発信し続けていきます。