空き家

【空き家長崎】 私が考える「家の再生」の意味

前回は、中古戸建の魅力についてお伝えしてきました。これまで約60件の中古戸建の販売に携わってまいりましたが、中でも「空き家」の再生にはやはりいくつかの課題があると考えています。今回は空き家再生事業の課題と空き家再生にかける私の思いについてお伝えしていきたいと思います。

 

空き家再生事業の3つの課題とは

空き家再生事業の3つの課題とは

みなさんは「空き家バンク」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?空き家バンクとは、空き家情報をサイトに掲載し、売り手(貸し手)と買い手(借り手)とをつなぐ事業のことをいいます。各地方自治体が運営しているものですが、残念ながら空き家解消にはつながっていない事実があります。実は空き家再生には大きく分けて3つの課題があるのです。

 

1 相談する窓口がない

大きな問題のひとつは、民間の空き家専門業者がほとんどいないことです。不動産会社が余剰資金で空き家事業を行っている例もありますが、多くありません。「どこに相談したらいいかわからない」という相談者の方が本当に多くいらっしゃいます。手続きが進まないまま建物の老朽化が進み、結局買い手・借り手がつかないということも多いのです。

 

2 不動産会社が積極的でない

空き家再生事業が進まない背景には、「不動産業者が積極的に介入しない」という問題もあります。2000万の物件と800万円の物件との仲介手数料を比較すると、やはり前者の方が利益も高いため、二の足を踏んでしまうのです。
また、空き家を20~100万円の金額で売り出すと、希望者が殺到し、その対応に追われてしまい通常業務が滞ってしまうという問題もあるようです。中には冷やかしのようなお客様も一定数発生してしまい、他のお客様に迷惑がかかるからと空き家を敬遠する業者さんもいらっしゃるのです。

 

3 販売リスクがあり、業者が手を出しづらい

空き家は、新築と比較すると経年劣化があります。さらに売却後、物件に不具合等が見つかれば、売主が宅建業者で買主が一般消費者の場合、原則売主側に「契約不適合責任」が課せられます。「契約不適合責任」とは、その契約の目的物が品質、数量、種類が異なることで、契約の目的が達せられないことを問う責任のことです。すなわち、売主側に対して買主から損害賠償請求されるケースもあるのです。しかし、実はこの空き家の売買の場合は、物件の状態によっては、売主が責任を負わなくていいケースも存在しています。

ところが、空き家再生事業を行った経験のない不動産業者は、このあたりのリスクについて経験的に理解できていないので、はなからトラブルになりそうな物件を心理的に避ける場合が多いのです。

 

個人が空き家売買に関わる場合も。しかしその実態は「流通するだけ」

家が「再生する」とは、人が再び住み、家が「生きる」こと

「空き家再生事業を行っている不動産業者はいないのか?」というと、そうでもありません。

しかし、その実態をよくよく調べていくと「第三者の為にする契約」により、利益を上げる不動産業者である「三為(さんため)業者」がほとんどです。

ここでいう「三為(さんため)業者」とは物件を転売する業者のことを指します。たとえば、売主、買主業者A、買主Bがいるとしましょう。このとき、売主と買主業者Aが売買契約を交わすと、買主Bと契約できるようになり、三者が合意していれば所有権を売主から買主Bへ登記上は直接渡すことが可能になります。

売主は業者ではなく個人であるため、契約不適合責任は免責となり、買主業者Aは、契約不適合責任を負うことになりますが、所有権は直接売主から買主Bへ移転することに加えて、不動産取得税が課税されません。

しかし、です。ここに空き家再生をする上では、大きな落とし穴があります。

仮に売主から買主へ転売したとしても、買主が「住まない」場合があるためです。売主も業者も買主が物件をどうしようと、責任はありません。そのため、売買が成立したものの、もし買主がそこからどうしようもできなければ、空き家のまま。ただ単に売主から買主Bに所有権が移っただけ、ということになってしまうのです。

私は、これを「空き家再生」であるとは考えていません。歴史や思いがつまった家を他の方に受け継いで、家にまた命を吹き込む。それこそが「再生」だと考えています。

 

家が「再生する」とは、人が再び住み、家が「生きる」こと

家が「再生する」とは、人が再び住み、家が「生きる」こと

私は空き家再生事業に着手した当初から「再生とは人が住むこと」だと思い続けてきました。だからこそ、買主・借り手様の意思を丁寧にお伺いし、「住んでいただくこと」をモットーとしてきたのです。家は大事に手入れをして愛情をかければ、年季の入った家だとしても、居心地よく住むことができます。

今後もこの思いは変わりません。「空き家を人が住む状態にする」「新しい生活を始めていただく」これが本当の意味での家の「再生」だと考えています。

 

まとめ

 

収益を出すのが難しい空き家再生事業でしたが、2024年7月1日に、宅地建物取引業者の報酬規定が改正され、800万円以下の不動産売買における仲介手数料が実質一律33万円になりました。

しかし、このような法改正が行われたとしても、空き家再生事業が浸透するには時間がかかるでしょうし、私が考える「再生」に近づくにはさらなる時間がかかると考えています。それでも私は、長崎の地から全国へ空き家再生事業を進めていくつもりです。次回は、ナガサキストが目指す未来と展望についてお話しします。