【空き家長崎】長崎市のスリバチ状の土地形状をご紹介
今回は、長崎市のスリバチ状の土地形状のご紹介をしていきます。スリバチ状であることで、魅力的な街並みになっているところもあります。 また不動産の観点から考えても常識では考えられないことが起きたりするため、日々刺激を受けながら向き合っています。
【空き家長崎】なぜ長崎はスリバチ状のかたちをしているの?
長崎が“なぜスリバチ状の地形をしているのか”を語るためには、私たちはいまから450年前まで遡る必要があります。 当時、西洋の人々にとって「日本=NAGASAKI」というほど、長崎は東アジアの玄関口として強烈な存在感を持っていました。 まだ国際交流が限定的だった時代に、宣教師たちは日本のあちこちを巡りながら、どこに港をつくるべきかを見極めていました。 その彼らが一致して高く評価した土地こそが、長崎でした。 彼らが注目したのは、長崎湾の“地形”です。波や風の影響をほとんど受けない穏やかな入り江でありながら、陸の手前までしっかりと水深がある。 つまり、当時の大型船であっても安全に接岸できる、極めて希少な湾だったのです。 さらに、三方を山に囲まれた天然の要塞のような地形は、外敵や荒天から船を守るうえでも最適でした。 宣教師たちはこの自然条件に強い魅力を感じ、キリシタン大名として知られる大村純忠に対し、「ここに国際貿易の港を開いてほしい」と要請します。 純忠はその判断を受け入れ、後に日本史の舞台となる長崎港が誕生しました。 その後、キリシタン文化が弾圧される“受難の時代”を迎え、さらに江戸幕府による鎖国へとつながっていく歴史は、多くの人がよく知るところです。 しかし、その大きな歴史の転換点の裏には、長崎の特異な地形が確かに存在していました。 実は、長崎だけでなく全国の主要な港町には共通点があります。それが「スリバチ状の地形」です。 1858(安政5)年、日本が開国した際、長崎は神奈川(のちの横浜)、函館とともに開港場として指定されました。 これらの都市でも、港の近くには丘陵地がせり立っており、その斜面に「外国人居留地」が形成されています。 たとえば横浜では、山下町や山手の「港の見える丘公園」がその典型です。長崎では、出島・唐人屋敷・東山手エリアが同様の歴史を持っています。 函館では明確な“居留地”として整備されたわけではないものの、市街地と斜面地が混ざり合う独特の景観が形成されました。 これらに共通するのは、「大型船が入りやすい港=海が深く、入り江が狭く、周囲が山で囲まれている」という構造です。 深い湾は、海底の地形がすでにスリバチ状になっていることを意味します。そしてそのまま海上へと姿を現した部分が、私たちが日常的に目にする港町の斜面地なのです。 つまり、港町として栄える場所は、必然的に“スリバチ状”にならざるを得ない。 長崎の独特の地形は、ただの自然現象ではなく、国際交流・貿易・歴史の大きな流れの中で選び抜かれた「地形の必然」だったというわけです。
【空き家長崎】スリバチ状の魅力
① 景観価値の高さと唯一無二の街並みが生まれる
長崎市の地形は、街を包み込むように山が連なり、中心部へ向かってスリバチ状に開いています。 この独特の地形のおかげで、長崎市の住宅や建物は自然と斜面に沿って立ち並ぶことになり、どこに立っていても「山・街・海」が一望できる立体的な景観が生まれます。 街のどこにいても高低差があるため、少し歩いただけで視界が開け、港や市街地、山並みを一望できるポイントが現れるのです。 特に高台からの眺望は、世界的に評価されるほど美しく、長崎の夜景が“世界新三大夜景”に選ばれたのも、このスリバチ状の地形があるからこそ。 家々の灯りが斜面全体に浮かぶ姿は「1000万ドルの夜景」と称され、国内外から多くの観光客を惹きつけます。 都市そのものが立体的に広がっているため、同じ景色でも見る角度によって全く異なる表情を見せる点も、この地形ならではの魅力です。 街に暮らす人にとっても、日常の中に“眺めの良い瞬間”が散りばめられることで、豊かな生活感や長崎らしさが自然と育まれていきます。 街の形そのものが、観光資源になっていると言えるのです。
② 坂の街ゆえの小さな店舗や独自文化の形成
スリバチ状の地形は、歴史的にも長崎を「港町として発展させた要因」のひとつです。 江戸時代から長崎の「安全」を支える大きなポイントであり、外敵の侵入を早期に察知しやすく、 もし攻められたとしても港を一望できる山の上から防衛できるという大きなメリットがありました。 波が穏やかで、山に囲まれた天然の良港は、かつて外国船がこぞって来航し、西洋との交流拠点として栄えました。 本来であれば防衛が難しいはずですが、長崎については自然の地形そのものが防壁として働いていたのです。 街の姿そのものが歴史の舞台であり、地形と歴史が深く結びついている点も、長崎ならではの魅力です。 現代では、平地が限られていることで、長崎では“斜面地”や“路地”を活かしたユニークな店舗が点在しています。 小規模なカフェ、ギャラリー、古民家を再生した雑貨店など、個性的な商いが育まれやすい環境です。 平地の広い都市では生まれにくい「個の魅力」が、スリバチ状の街では自然と形成されていきます。 文化的な多様性や街歩きの楽しさは、この地形が育んだ大きなメリットとも言えます。 坂道の多い暮らし、階段での移動、斜面にへばりつくように建てられた住宅——こうした生活環境は、長崎市民の独自の生活文化を育んできました。 家同士の距離が近いことでコミュニティが形成されやすい反面、車が入れないエリアも多いため、住民同士の助け合いが自然と日常に根づきます。 さらに、斜面の途中に広場や公園が配置されることで、街全体がまるで階段状の舞台のような空間になり、独特の情緒を持つ街並みが形成されています。 この“長崎らしさ”こそが、観光都市としてのブランド価値にもつながっているのです。
③ 中心部が谷底にあることで、生活利便性が高い
スリバチ状の地形では、平地が少ない分、斜面に住宅地が広がるため、街の機能が中心部に凝縮され、自然と人々が谷底の中心部へ集まる構造になります。 これは都市づくりにおいて非常に効率的で、長崎市の中心市街地(浜町・新地・長崎駅周辺)に多くの商業施設や行政機関がコンパクトにまとまっている理由でもあります。 その結果、長崎市は人口40万人弱の規模でありながら、生活圏・商業圏・公共施設が非常にコンパクトに収まる都市構造となりました。 人口40万人弱が「ギュッ」と集まるこの構造のおかげで、都市としての利便性とコンパクトシティとしての機能性を兼ね備えています。 コンパクトで、“歩いて生活できる街”という点は、長崎の大きな特徴です。 坂や階段は多いものの、移動距離は短く、生活に必要な施設や商店街、医療機関などが密集しているため、実は利便性が高い都市でもあります。 コンパクトシティとしての長崎は、環境負荷の低減や公共交通の最適化という観点からもメリットが大きく、現代の都市計画でも高い評価を受けています。 また、坂の多い長崎では、日常の移動が自然と“適度な運動”になります。 階段や坂道の昇り降りが生活の一部であるため、高齢者でも足腰が強い人が多いと言われます。 地形が生活習慣を形づくり、結果として健康的なライフスタイルにつながる点も、見逃せないメリットです。 実際に上り下りをされている高齢者の方を街で見かけた際に感じることですが、 急な坂や100段以上ある階段をものともせず、スタスタと進まれていることに本当に驚きます。
④ 災害リスクが比較的低く、建物が長持ちしやすい
長崎市は全国的に見ても地震発生が少ない地域として知られています。 長崎市の発表によると、長崎市は全国の県庁所在地の中で、地震の発生確率の低さが第2位です。 日本は地震大国と言われる中、地震の被災リスクが抑えられるという点は非常に魅力的です。 また、スリバチ状の地形によって揺れの伝わり方が変わり、建物の倒壊リスクが相対的に低くなるという側面もあります。 斜面地は硬い地盤であることが多く、平野部にありがちな液状化現象も起こりにくい。 さらに、スリバチ状の地形によって風が山に遮られるため、強風被害が出にくいという特性もあります。 これらの要素が組み合わさることで、建物の劣化スピードが緩やかになり、古民家や戦前の建物が今でも数多く残っているのです。 これは、古い住宅でも再生しやすいというメリットに直結します。 築40年や築50年と一般的には古い物件と呼ばれる条件に見える物件であっても、建物の構造そのものはしっかりと生きており、 正しいやり方でしっかりと再生活動を行うことで、この先も住むことのできる物件に生まれ変わらせることができます。 空き家活用が進みやすい長崎の背景には、この地形的な要因も大きく影響しており、長崎の築古物件が“蘇りやすい土地”である理由にもつながっています。 また、洪水や浸水被害が平野部に比べて受けにくいというメリットもあります。 斜面に住宅が多い都市では、大規模な川が市街地を通らないケースが多く、長崎もその例外ではありません。 高さのある位置に家が建つため、河川氾濫による浸水被害を受けにくいという利点があります。 もちろん土砂災害のリスクはゼロではありませんが、沿岸部の洪水や大雨による浸水を避けられるという点は、スリバチ状の地形ならではの恩恵と言えます。
⑤ 独特の地形が生み出す不動産価格の歪み
スリバチ状の地形は、場所によって“眺望価値”というプレミアムを生み出します。 とくに長崎では、海と街を一望できる高台物件が人気で、同じ広さの土地でも場所によって価値の差が明確になりやすい特徴があります。 当社でも海が一望できる立地の物件を直近で手掛けたのですが、反響が大きく、多くの方から住みたい!とお問い合わせをいただいております。 これまでも、観光ホテルが多く立ち並ぶエリアの物件を取り扱ったこともありますが、やはりそういった物件も非常に人気が高く、 近隣にお住まいの方がご自宅として住まわれたいというお客様からお問い合わせをいただき、当社から販売をさせていただきました。 さらに、地盤の強い斜面地が多いことで、耐震性の面でも安心材料となり、再生投資に向いているエリアが多い点も魅力です。 また、価格においては、長崎市内でも平地にある新築マンションは5,000万円から1億円に届く物件まで出てきています。 一方で斜面地の戸建は、車がいかないということで、階段を100段もあがるとなると、価格がほとんどつかない場合があります。 仮にそのマンションと徒歩5分程度しか変わらなかったとしても、です。 実勢価格と評価額(固定資産税評価、相続税評価等含む)の乖離が大きく起きていると感じています。 ただ、そういったことも手伝って、空き家再生する際に、 ある程度のリフォームを行うことで家賃5万円代で貸出をするということができているため、 当社としては空き家再生に向いている土地柄だと考えています。 取得価格を抑えることができながら、得られる賃料の水準が高いというこのギャップこそが不動産価格の歪みであり、 当社が空き家再生を長崎市で行うことを推奨している最大の理由です。 また、今までのご紹介の通り、スリバチ状の土地形状をしたエリアには似たような特性があったりするため、 今後全国へ向けた際には、そういったエリアも検討エリアに入ってくると考えています。
まとめ
長崎市のスリバチ状の地形は「坂が多くて暮らしが大変」とネガティブに語られることもありますが、その裏側には、
✔ 景観・夜景
✔ 坂の街としての独自文化の形成
✔ コンパクトシティ化
✔災害リスクが低い土台
✔不動産投資を行う優位性
など、数え切れないほどのメリットが隠れています。
長崎が長崎である理由——
その根底には、自然がつくった“スリバチ状の器”が静かに存在し続けているのです。
本記事では、スリバチ状ができている歴史的背景と、魅力をご紹介しました。 まだまだ書ききれない部分もありましたので、色々な記事を書きながら書き足していこうと思っています。 他にもこういう魅力があるよ!などご意見やご感想がございましたら、是非弊社SNSにてご連絡をいただけたら幸いです。